失念系男子(デジャブ)
はい。脳内審議の結果、普通に連続投稿することにしました。
普段は頑張って6000平均くらいで書いてるんですけど、3000くらいを平均にするならもうちょっとペース上げてアップできなくはないんですよね、どうすればいいですかね?
p.s.タイトル間違えて仮のやつでそのまま投稿してたのアホすぎて草
守衛さんを後ろに校舎を出ると、流石に6時を過ぎているだけあって案の定暗くなってきている。
比較的天気はいいものの、夕日は山際と雲間から辛うじて差し込む程度であり、校庭と校舎を照らす光はわずかしかない。
もうほとんど夜と言って差し支えないレベルだ。
(さて、と。このあとどう動くかだよな…)
今日このあとの予定としては、何やらとってもきな臭い土御門所属の組織(仮)にお邪魔することになっているが…この流れだと校門前で車待ちの感じか。
それはともかく、この後どう立ち回るかで俺の人生はかなり変わってくるのは間違い無いだろう。常に監視されて生活するなんてのは御免被りたいし、だからと言ってこんなアブない世界に関わり続けるなんてもっと御免だ。
どうにか一番収まりのいいであろう口外無用の誓約書にサインだけで済ませられるといいんだけども…そこら辺は俺の態度次第だと思う、なるべく聞き分けのいい無能ぶってみるしか無いか。
思案を張り巡らせている時にふと隣を見ると土御門も眉間に皺が寄っている、どうやら何か考えているようだった。
……もしやこのあと俺をどう料理してやるかとか考えてるんだろうか、ありえる。こいつ割とサドだしな。
疑いの目で土御門を見ていると偶然目があった、何やら怪訝な表情をすると腰に手を回し始めたので慌ててそっぽを向く。
こええ…エスパーかよこいつ…
それはそうと車か〜、正門前で車だとあんまりいい思い出が無いんだよなあ…
うちの学校は校庭をまっすぐ突っ切った先に正門がある割とスタンダードな造りの学校だが、でも登校は別に裏門を利用してもいいので俺は朝だけ裏門を利用している。
というのも正門は自転車置き場が近いから朝は自転車がごった返しになって混むんだよな…影が薄いことの致命的欠点として普通に轢かれそうになるんだよな、こればっかりは相手に気を付けてもらうことが難しいので本気で自己防衛しないといけない。
某おじさん的に言うと『相手なんかアテにしちゃダメ』だからな、そもそも個人の体質だし。
自分の体質について恨めしく思っていながら歩いていると、真横を歩いていた土御門が丁度校庭の真ん中あたりで急に後ろを歩いていた守衛さんの方へ振り返った。
「さて、と。守衛さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけどよろしいでしょうか?」
「ん?なんだい?」
「何か、おかしいと思いませんか?」
土御門は日常的に作っているらしい張り付けたような笑顔で守衛さんに尋ねる。しかしその口調はどことなく鋭いものであり、決して穏やかな雰囲気はない、寧ろ質問というよりは尋問に近いようにすら思えた。
「おかしいこと…ねえ?今日1日通して考えても…大したことはなかったけども」
「へえ、そうですか。ところで生徒も教員も全くいないのと、私のこの格好には違和感を覚えなかったのですか?」
…そういやそうじゃん!?
こいつは今電波女モード、つまり何故か若干際どいデザインの巫女服もどきを着ている。ってことは冷静に考えてそれは大した違和感じゃないのはおかしいだろ、端から見たらやべえやつだし。
「………いや、そういう趣味のやつもいたっておかしくねえし…」
「言い訳は結構です。はい、擬態はうまいけど残念でした。人払いの結界の中で平然としている貴女は一体どなたかしら?」
「………っあ゛〜、そういえばそんなのもあったな。すっかり忘れてたぜ。じゃあもうこのアッツい服を着てる意味なんざねえなあァ?!!」
さっきまでのどこか取り繕うような口調が砕け、正体不明の巨女は深々と被っていた守衛帽を放り捨てる。帽子の中に収められていた黒い長髪が流れ出た。
そして制服である薄水色のシャツ、その長袖を豪快に引きちぎると牙を見せるように頬を釣り上げ笑った。
ぐにゃり。
鎌鼬が昨日見せたオーラのようなものが女性から吹き上がると、それによって蜃気楼のように女性の背後、校舎に空や山々という背景が揺らめく。
その空間の歪みのようなものが収まると、そこに立っていたのは鬼女だった。鼻が高いからだろうか、どこかエキゾチックを感じる顔立ちで、しかしその額からはまさに鬼のような巨大なドス黒い2本の角が天を衝いていた。
ーーーしかし目を引くのはそこじゃない。
引き裂いて豪快なノンスリーブになったために肩から指先まで丸見えになった、その肌の見える部分を含めて顔以外のありとあらゆるところに適当に貼ってつけたように大小様々に多数の目玉が生えていた。各々自由に動いていた大量の目玉が一斉にこちらを捉える。
うげえ…見ていると鳥肌がおさまらない、たまらず目を逸らす。
なんだあいつ…百目か?現代の流行に乗っかって絶妙に擬人化された百目か??
……というかさっきもさっきで気持ち悪かったがこれはさらに無理だ、なんというか…生理的に受け付けない。
「……なるほど、さてはアンタ百々目鬼ね。ならその制服も掠め取ったってわけか、通りで服のサイズが微妙に合ってないわけだわ」
「へっ、盗まれるようなトコロに置いとく方が悪い、そうは思わねえか?」
どど、めき…?全く知らない名前だ、話を聞く限りだと盗みを働く系の妖怪か…?
というか人払い?ってそういえば思い返すと起きた時には昨日と同じで校舎に人っ子一人いなかったじゃん…気付かなかった。
「マジじゃん…」
「…えっ、アンタわかっててこいつを校庭に誘導したんじゃないの?」
「んっ?…あ、そうそう、そうに決まってるだろ?」
「…」
慌ててそれっぽいことを言ってみるが、無言のままグサグサと懐疑の視線が飛んでくる。ジト目でこちらを見つめる土御門、なんとなく言いたいことはわかるが、ごもっともです。
いや昨日は一人ぼっちだったからなんとなく違和感に気付いたようなもんだし…勿論今日と違って誰とも話したりしてなかったし、勿論他人がいるってだけでこんなに注意散漫になるのも問題だとは思うけども…
「…先手必勝ッ!轟穿て、紅種『彼岸花』ッ!」
「あっ卑怯だコイツ!?」
話の鼻を折るかのように土御門が唐突に百々目鬼からちょうど死角になる位置で忍ばせていた符を不意打ちで投擲した。
投擲した符は一条に紅く尾を引き百々目鬼を直撃し、瞬間目が痛くなるほどの閃光と轟音を撒き散らして紅色の雷撃が百々目鬼を全身隈無く針鼠のように刺し貫いた。
「ガァッッ!!!?」
見覚えのあるエフェクト、昨日鎌鼬を一撃で仕留めたやつだ、人間みたいなのに対しても容赦ねえなオイ!?
確か鎌鼬はこの一撃で黒焦げになってたし、オーバーキルになるんじゃないか…?
正直、人型の黒炭の塊は見たくない、動物型だから昨日はどうにかなってたが人型になると…ちょっと心が持つか怪しい。
稲妻が迸る際の甲高い音と目に悪いほどの極光に混じり、辺りに肉が焼けるような焦げ臭い匂いが立ち込める。
…少し気分が悪くなってきた。
「ッあ゛ぁ゛ッッ!!!洒落くせェんだよ!!!」
雷の轟音に負けないほどの怒声を撒き散らすと赤雷の針山が瞬時に霧散する。
盗んだらしい守衛服こそアバンギャルド的なトンデモスタイルに変貌しているが、その端から見える肉体は煤けてこそいるが目立った大きな外傷はない、って外傷がない…っ!!?
「…はああ??!!」
口がふさがらない、顎が外れそうになる程驚く。『人型の黒炭』の予想は悪い意味で外れた。横に立っている術者本人も目に見えて驚いてこそいないが、頬を汗が走っているところを見るにそれなりの何かを感じているんだろう。
電撃を食らっていた間は閉じていたらしい目玉が一斉に開眼して先程と異なって真っ赤に血走った恨みがましい数多の視線がこちらを睨みつけて離さない。
百々目鬼は口から大量の白煙を勢いよく吐き出すと驚いている俺達を嘲るような態度で話し出した。
「へへ、オレは末席も末席だが仮にも鬼だぜ?
大和一の有名妖怪サマが、こんな生っちょろい火花程度で膝を折る訳ねえだろうがよ!!?」
「ひ、火花って…」
おいおいおいおい…嘘だろ、仮にも倒す為にあんなに苦労した鎌鼬が一発で丸焦げになるような一撃だぞ…?!
俺の中にあった楽勝ムードが一瞬にして消え失せる。目線の先では、長身の女鬼が獰猛な笑みを浮かべていた。まるで俺達を嘲笑っているかのような風貌は、何時の間にか確かに感じていたはずの余裕を心底冷え切るような恐怖心にすり替えた。
「ンじゃまあ、大分痺れも取れたことだしっと…ふッ!!」
「…ッ避けて!!」
土御門によって勢いよく突き飛ばされてる、咄嗟のことで受身が取れず尾てい骨が痛くなるほどの勢いで尻餅をついた。
土御門も土御門で強く押した反動によって俺とは逆側、かなりの勢いで蹌踉てしまっていた。
その直後、先ほどまで俺と土御門が立っていたその場所、そこに百々目鬼がまるで瞬間移動したかのようなスピードで強襲した。
辛うじて目で捉えることのできた細腕による一撃は、凄まじい音と共にグラウンドの整備された地面をまるで薄氷のように破砕する。
「……は?」
地面を、パンチで、陥没……?
想像以上の理不尽に対する疑問詞が無意識に呼吸と一緒に零れ出た。あまりの非現実的光景、昨日とはまた違ったそれを脳みそが理解を拒む。
…何が命の危険は皆無だ、何が安心していいだ、こんなの幾つ命があったって足らねえだろ…ッ?!
頭が纏まらない、どうしようもなく思考停止に陥る。
脳みそが状況の理解を拒むせいで何も考えられない、頭の中は土御門に対する不平不満と純粋な恐怖が支配した。呼吸が荒げて心臓が跳ね上がり、両膝が盛大に笑う。漏らさなかっただけ偉いと自分を褒めてやりたい気分だよちくしょうが。
焦燥と垂れ流れる冷や汗、頭は空回りでフル回転しているが肝心の体が動かない。今になって怖すぎて硬直してるのが馬鹿みたいだ。情けなくって引き笑いが出た。
細腕で地面を陥没させたバケモノは腕についた土埃を軽く払うと払われている間閉じていた数多の瞳が開眼し、完全に硬直している俺を捉える。
「おいおい、ワタシの拳を避けてんじゃねえよ、素直に食らっとけって…なあ?!」
「ッひい!?」
独立してギョロギョロと動く身体中の目が一斉に俺を捉える、その動きがあまりに気持ち悪くて悲鳴を上げてしまった。
女の姿をした正真正銘本物の鬼は、それを観ると鋭利な牙を晒して愉しそうに、そして不敵に嗤った。
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