救世主系男子
シャニマス面白くね?
というわけで戦闘パート終了です、ようやく世界観設定の説明とかに移れる…
今は考えされる時間を与えされるべきじゃない、時間が過ぎれば過ぎるほど電波女の死のリミットが迫ってくる…だったら…!
「交渉決裂まであと三秒、にーい」
時間は短く、でも余裕があるようにゆっくりとカウントを進める。こっちから時間を指定することで俺のペースに無理やり持っていくしかねえっ…!!
「待ったッ!その交渉、乗ってやる。で、人質の交換はどうするのかのう?」
ドスの効いた声が一転、好々爺を思わせるような元の口調に戻るがこっちを見る目は一切笑っていない。油断すれば殺されるという恐ろしい事実。まるで鋭いナイフを突きつけられているような寒気と錯覚を覚える。
だとしても…釣れたと内心ほくそ笑む。
しかしそれが絶対に表に出さないように細心の注意を払う、バレたら一巻の終わり、即デッドエンド待ったなしだ。
でもこれで第一関門、最低限だが人質の安全の確保は完了したんじゃないか?
事態は未だに一瞬の油断もできない状況ではあるが、心に余裕ができたのは確か。心音が心なしか穏やかになってきてる気がする、余裕が生まれてきたってことだろうか。
でも、勿論相手も馬鹿じゃない。交渉に乗ったフリをして俺をそのまま殺す可能性もなくはない。
この状況でまだ俺が生きているってことがその騙し打ちをほぼ100%否定する材料と言えるんじゃないだろうか。だってコイツは殺ろうと思えばすぐさま俺を殺すことができるのだから。
「まずはそこの電波女を回収させてもらう。その後にお前の兄弟の居所を教えてやるよ」
「…お主の方に利益がありすぎるのう、拒否させてもらう」
「おいおい、ほぼ対等な条件のつもりだぜ、お前なら俺が指定した場所に直ぐに着けるだろうし、その間に負傷者を担いで逃げられるわけないだろ?ここまでわざわざ助けに来ておいて、手負いの味方を残したまま俺が逃げるとでも?」
「…拒否すると言っているのが聞こえなかったのかのう?」
鎌が電波女の首筋を軽くなぞる。薄皮一枚が切り裂かれて赤い液体が肌に幾つかの珠を形作った。鎌鼬の口調が次第に先ほどと同じ荒げたものに変わっていく。
視線はさらに殺気を増していき、呼吸が荒くなることで口角が吊りあがり口の端から鋭い牙が覗き始める。
…まずい、強気に行きすぎた。
吹き上がった冷や汗が背中をべったりと濡らす。何がこっちのペースだよ、舐め腐ってるんじゃねえよ過去の俺っ…!?
落ち着いていた心臓がまたハイペースでビートを刻む。
草木も眠っているんじゃないかと思うほど学校はしんと静まり返っていて、それのせいか煩いほど鼓動が聞こえる。
「言っておくが、儂はお前を今すぐ八つ裂きにしてやりたいほど向っ腹が立っている。何なら今この女を殺してやったっていいのだぞ?」
…正念場だ、ここで取れるのは2択。
妥協して教えた後に助ける、この場合だと2人揃って用済みとして即殺される可能性が若干ある。もしくは…もうここで奥の手を使うかだ。
絶対やってはいけないのは、俺が兄弟を封印した例のキューブを持ってることを明かすこと。
俺一人で鎌鼬と正面から戦うとしてそんなの逆立ちしたって勝てない。だからって2人揃って仲良く犬死になんてゴメンだ。
どうする、どうする…慌てそうになるのを必死で自制する、考えろ。考える。
(この交渉は時間との勝負電波女が失血死したら結局俺がここに来た意味はなくなるどうするやっぱり教えた後に助けるか?いやそれだと逃げるしかなくなるけど逃げられる自信も確証もないどうするもう奥の手を使うか?ダメだろ一か八かなんて俺の安全の保証がされてないだろ俺が死んだら元も子もないなら同じタイミングで交換するどうやってだよ人と情報の交換を同時タイミングってなんだよ電波女を投げさせるのか?重いだろ俺持てる気がしねえよだとしたらいくつかのパターンで考える必要が出てくるけどそれを思考している時間が残されているはずがない少しだけ時間を作らせてもらえるか?無理だろ相手カンカンに怒ってて俺をぶっ殺そうとしてんだぞ無理に決まってんだろ馬鹿野郎となるといまの時間を最大限活用してどうにか逆転の一手をひねり出すほかない)
様々なパターンが頭の中で提唱されては否定されていく。思いつくもの全部不可能。高校入試と時でもこんなに頭を使った覚えがない。
頭の奥で何かが蠢いているような感覚。ものすごく頭痛がする…なんならすごい熱が出ている気もする。
でもこれ以上時間をかけている場合じゃねえんだよ…っ!どっちも無事で済む方法……でも俺が死んだらどの道どっちも助からない…ん?
そこまで考えて何かが引っ掛かった。
(…俺、守りの姿勢になってんだ)
この状況で何のリスクを負わずに助かろうとするのは、少し虫が良すぎるだろ。この状況は何もしなかったら死ぬんだ。
そしてバカだから俺はノコノコそんな状況に首を突っ込んでおきながら、ノーリスクでなるべく危険を冒さず最大限のリターンを得ようとしてた。
そうか。では、全てを捨てる覚悟を以って臨もうか。
「…わかった、こんなこともあろうかとメモを用意してある。これに隠した場所を書いて、俺がお前に直接渡しに行く、これでいいだろ?」
鞄から手早く筆箱を取り出し鞄本体は邪魔なので適当に放り捨てる。その中からメモとペンを取り出して鎌鼬に見えるように手の動きでそれを強調した。
—————もう一か八かで行く。そもそも危ない橋を渡らないで、こんな状況をどうにか出来ると考えていた俺が一番バカだ。
今まではきっとどこかゲームのような感覚だった。俺は覚悟の賭け方を知らなすぎた。命懸けの行動と自分に言い聞かせながらも結局は自己満足から抜け出せていなかった。
幾許か後、電波女の首筋に突きつけていた鎌を引っ込めながら鎌鼬が返答した。
「……交渉成立だ、さっさとメモを書いてこっちに来い。無論、変な動きを見せたら即殺す、まあそんなヘマはしないと思うがのう?」
無言で首を縦に振り、すぐさま膝立てになって膝の皿の上にメモを置いて手早く文字を書く。釘を刺された、でもやらなかったら確実に死ぬならならなきゃ勝ち筋ねえんだよっ…!
書いたメモを4つ折りにし鎌鼬に向かって歩き出す、そして俺と鎌鼬の間の距離が1m程度の所で足を止める、多分ここが間合いの外ってやつだと思う。
俺から見て鎌鼬とその後方4mほどに焼却炉、鎌鼬の毛皮は床用ワックスによって体毛は纏まりを持って艶めき、月と火の灯りを浴びて光沢を照らしている。
丁度鎌鼬と焼却炉が縦で重なるかどうかの位置で足を止める。さてと、こっから正念場…っ!
「そらよ…ッ!」
小さく折り畳んだメモを鎌鼬めがけてフライ気味で軽く放り投げる。放物線を描いて飛んでいく小さなメモ書き、鎌鼬の視線が一瞬空中のメモに向いて固定される。
その隙に素早くズボンの横ポケットから、最後まで使う機会がなくてお蔵入り寸前だった隠しダネを取り出し、絶対に見えないように強く握りしめる。
「っと。まあ近づいてくるような阿呆じゃねえよなぁ、お主は……さて、と」
鎌鼬は何の危なげもなく器用に前足を使ってメモをキャッチ。これまた器用に四つ折りのメモを開いていく。
しかし、中を見た瞬間、鎌鼬が完全に身動きを停止した。徐々に目を見開き体がわなわなと震え始める。覚えているのは怒りか驚愕か…まあどっちでもいいんだけども。
—————なんたってメモの内容は『ヒント:火炙り』なんだから。
ゆっくりと鎌鼬が視線を俺に向ける。
俺が掲げていた右手にはこれ見よがしに赤い半透明の物が握られており、それは炉の光を反射して指先で紅色に煌めく。
鎌鼬と視線が交わされた瞬間につかさず投球フォームに移行。手に握っていたそれを焼却炉めがけて全力でブン投げるッッ!!
鎌鼬の真横をヒュンっ!と子気味いい風切り音を鳴らしながら、赤いナニカが通り抜けて行った。唖然としていた表情が焦燥へと即座に切り替わる。
「ッッ!!!!??」
予想通りとんでもない突風が巻き上がり、それを反射的に腕で遮る。腕の隙間から薄目で覗くと鎌鼬はやはり俺が投げたものを全力で掴み取ろうとしていた。
すぐさま鎌鼬めがけて全力で走り出す。学ランのポケットから御守り代わりに渡された札を握りしめると、右手に静電気のような衝撃が走った。つまりこれはまだ効力アリってことだよな!
視線の先、唐突に飛んだせいか無理な姿勢のまま空中で俺が放ったモノをキャッチする鎌鼬。
しかし、たかだか4mあるかどうかの焼却炉までまっすぐ飛び出したわけだ。さらに無理な姿勢転換で火に飛び込むコースから外れるが、当然勢いを殺しきることなんてできない。
当然の結果として、鎌鼬が金属製の錆びれた焼却炉に衝突し、鈍い音が辺りに響く。
崩れ落ちたその手には見事に俺が投げたプラスチック製のおもちゃみたいな宝石が握られていた。
演劇部の部室にあった衣装用のやつをかっぱらってきてたけど、役に立ってよかった。
なりふり構わず突撃したせいで頭を強打したのか、鎌鼬はよろけながら立ち上がり、手に握られていた予想外のものを見る。
ふらつきながらも憤怒の表情でこちらを睨みつけるが、鎌鼬との残りの距離が1mを切ったこの状況なら、テメエが何かするより俺の拳が届く方が速いッ!
「残念ッ、火炙りはテメエだッ!!」
体重とダッシュの勢いの乗った右拳を顔面めがけて叩き込む。拳が鎌鼬のごわごわした頬にめり込むと、すぐさま握りこんでいた符が紅のスパークを放ち術式を起動させた。
ーーー電波女が言ってたことが確かなら…!
(確か1、2mくらい鎌鼬を吹っ飛ぶばせるってなぁ!!)
ド派手な紅色の閃光と共に凄まじい衝撃が鎌鼬と俺の間に発生し、お互いに勢いよく後方に吹っ飛ばされる。俺は吹っ飛ばされても尻餅をつく程度で済むが…鎌鼬の後方にあるのはッッ!!
「あ゛あ゛あ゛あアアァッッ!?!!?」
仰け反った状態で胴体の半ばまでが完全に火の海に浸かった鎌鼬が、全身をとてつもない勢いで振り回しながら苦痛で絶叫する。
焼却炉の中に完全に落ちることはできなかったが上半身が大炎上。凄まじく燃え盛っている鎌鼬は地面をのたうち回る。
油じゃないにしてもワックスがたっっっぷりとしみ込んだ体毛はよく燃えるんだろ!!あんまよく知らないけどなあ!!!
「ないす、さぽーと…っ!」
囁くような弱々しい声が後ろから聞こえた、振り返ると顔が土気色になっている電波女が上半身だけ起こして血まみれの札を構えていた、って!?
「バ…ッ!?んな体で動いたらお前、死んじゃうって!!」
「封印術式符…紅種…モウセン、ゴケ…」
電波女は札を炎上している鎌鼬に投擲するとそのまま地面に倒れこんだ。札は満身創痍の人間が投げたとは思えない速度で鎌鼬に命中。
先ほどまでと違いどこか弱々しいスパークが眩く帯電がすると、符から吹き出すように現れた大量の紅い光の糸が鎌鼬を包み込んみ紅い繭を型作る。
そして完成した繭はどんどん縮んでいき、それに比例し次第に小さくなっていく悍しい叫喚は完全に聞こえなくなった。
光が完全に収まった後には見慣れてきた赤いサイコロ大のキューブが落ちていた。
すぐに回収するとやはりその中には先ほどのキューブとは異なり、尾の先が鋭い鎌になっている小さな獣が収められていた。
テストがしばらく続きますので次の投稿は20日以降となります、またまたすいません。
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