【ワープ】この世は金と知恵【してみた】
街までの距離を表示し、それを千分の一まで縮める。
俺はジャンプすると同時に、その動作を行った。
風景がみるみる変わっていく。
そして、一瞬のうちに俺たちは街の入り口のすぐ前に到着していた。
「お、おおっ、すごいです!」
「わはは、すごいだろ!」
上手くいってよかった。内心冷や汗ものだったけど。
「何が起こったのです、レルさん?」
「簡単な話さ。俺たちと街までの空間を、俺のスキルで限りなく小さくしたってだけよ」
俺たちと街の間の空間が縮まれば、当然街までの距離も縮まる。
無理な動きをして体をズタズタにせずにすむというわけだ。
その時俺は、俺と体を密着させているフィアのことを思い出した。
残念ながら俺の家には女性ものの下着がなかった。
いや、あったらあったで問題だけど、今はおいといて。
仕方なく、フィアには男物の服を直で着てもらうことにした。
つまりフィアは今、ノーパンノーブラ状態で俺の体に掴まっているというわけだ。
そういわれると、なんだかフィアの体の感触がダイレクトに伝わっているような……。
………………。
…………。
……落ち着け。いい年した大人が何を興奮しているんだ。バカバカ。クララのバカ。ん、クララって誰だ? 俺はちょっと疲れているのかもしれない。
「あの、レルさん」
「な、ななななんだ、どうした?」
「れ、レルさんこそどうしたんです、そんなに慌てて、です」
「いや、俺はなんでもないただの中年だ。気にしないでくれ」
「は、はあ、分かりましたです」
「それで、なんだって?」
「あ、はい、あの、レルさん、左手、大丈夫なんです?」
「左手?」
そうだ、左手だ。
俺は無意識のうちにフィアの体を支えていた。
自由が利かないはずの左手で。
試しに左手を開いたり閉じたりしてみた。
力はほとんど入らないが、多少動かすことはできるようになっているらしい。
動かすたびにまあまあ痛むけれど。
「少し無理すれば動かせるな。これも聖女効果か?」
「私のキスが効いたのかもしれませんですね!」
ぶっ。
思わず吹き出す俺。
通りすがった人たちが妙な視線を浴びせてくる。
ちょっと恥ずかしい。
「……よせよフィア、こんなところでそんなことを言うのは」
「あ、ごめんなさいです。ここは天界ではないのでしたですね」
「まあいいさ。とりあえず買い物を済ませようぜ」
屋根を修理する木材も買った方がいいだろうな。出費がかさむ。
いや、待てよ?
俺はポケットから財布を取り出して、中から100ペラ(※)紙幣を出した。
こいつの桁を増やせば、俺、金持ちじゃね?
さっそく試してみる。
紙幣の枚数を『1』から『100』にすれば増えるはずだ。
「レルさん、お金を増やすんですか?」
「そうさ、見てな」
さあ、どうだ?
(※)ペラ・・・1ペラがおよそ100円。恐らくもう二度と出てこないであろう、この世界におけるお金の単位。




