【なぜか】泣かないで、聖女【若返ってみた】
鏡の中の俺は、俺の知っている俺じゃなかった。
いや、知っているっちゃ知ってるんだけど。でも、最近は見ていない。
要するに、そこに映っていた俺は、まさしく二十歳前後のころの俺の姿をしていた。
「いやー、聖女のキスには若返り効果があるんです。話には聞いていたのですけど、まさか本当とは思ってなかったです」
「ああ、そうだな……」
本当に若返っている。体が軽い。髪の毛も黒色に戻っていて、皺もなくなっている、そして何より、肩が凝ってない!
「ありがとな、フィア。俺、これからも頑張れるような気がしてきたよ」
「それはよかったです。人々に希望を与えるのが神様の仕事ですから」
「本当にありがとう。フィア、俺、神様信じる!」
振り返ると、フィアはなぜか毛布を体中に巻きつけ、しゃがみこんでいた。
「どうしたんだ?」
「だ、だって、裸ですよ? 恥ずかしいじゃないですか」
フィアが顔を赤くする。
「なんでいきなり……さっきまでどうも思ってなかったんだろ?」
「そ、そうなんですけど、なんだか急に恥ずかしくなっちゃって、です」
フィアは恥じらうように上目遣いで俺の方を見る。
なんか、そういうふうにされるとこっちも恥ずかしくなるんだけど。むしろ毛布にくるまってる方が、体のラインとかが強調されててすごいアレ、なんつーかその、エロい。
そこでふと、俺は、あの四角い窓みたいなものが消えているのに気が付いた。
「なあフィア、あのステータスを見るやつってどこに言ったんだ?」
「あれ? 消えてしまってますですね。まあ私に任せてくださいです。【ステータスオープン】」
さっきと同じように、フィアが人差し指を俺に向ける。
「…………」
「…………」
しかしなにもおこらなかった!
「あ、あれ? おかしいですね?」
首をかしげるフィア。
「何か間違ったんじゃねえの? ほら、確かさっきはこんなふうに……【ステータスオープン】」
俺がフィアの真似をすると、あの四角い窓が再び姿を現した。
それを見て、フィアははっとしたような表情をする。
「ま、まさか……」
「どうしたんだ?」
「さっきレルさんにスキルを渡したとき、神様の力を使い果たしてしまったのかもしれません」
「というと?」
「今の私は、ただの女の子になってしまったということです」
「何か困るのか?」
俺が聞くと、フィアの瞳にみるみるうちに涙がたまり始めた。
そして、その涙がフィアの大きな金色の目から零れ落ちると同時に、
「もう天界に帰れないんですーっ!」




