表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/39

【限界】少女と聖女と中年【来てみた】


「……この街でしなければならないことは、既に概ね達成しましたわ。本当はあの聖女様のことをもっと知りたかったけれど、仕方ありませんわね。今回はわたくしの負けということにしておいてあげます」

「負け惜しみか?」

「まさか」


 ミアが立ち上がる。

 そして、一歩ずつ屋根の端の方へ歩き出した。


「おい、てめえ、何する気だ?」

「言ったでしょう? 今回はわたくしの負けですわ」


 そう言い残し、ミアは屋根から飛び降りた。


「よせ!」


 俺は慌てて屋根のふちに駆け寄った。

 それから、地面を見下ろした。

 だが、そこにはミアの姿はなかった。


「……消えた!?」


 ふいに体の力が入らなくなる。

 屋根の上に倒れこみ、微塵も動けなくなる。

 限界か。

 あとはフィアを探して連れて帰るだけだってのに。

 意識さえ遠のいていく。

 そして俺は、あることに気が付いてしまった。


 まさかこれ、最悪の事態なんじゃないか?


 【桁を操るスキル(インフレーター)】を使えば使うほど俺は老化が進んでいく。

 ということは、もし使いすぎれば、老化を進ませすぎればどうなるかなんて、分かり切ったことだ。


 当然寿命が来る。


 死ぬのか、俺は?

 思い返してみれば、フィアと初めて出会ったのは昨日の話だ。

 短い間だったけど、俺の人生の中で一番濃密な時間だったように感じる。

 すまん、フィア。お前を天界に帰してやる約束は、守れそうにない……。


 俺が重くなった体に目を閉じかけたとき。


「レル! 何やってんの、こんなところで!」

「……クソガキ、か?」

「クソガキじゃない、エニルだよっ!」


 ますます最悪だ。

 最後の最後で見たのが、このクソガキの幻覚とは。


「レル、寝ちゃだめだよ! フィアがもうすぐ来るからね!」


 エニルが俺の傍に屈み、俺の手を握る。


「フィアが……?」

「そう。パパたちが助けてくれたんだ。レルがあのミア・ザナギ・ハルフォードを足止めしていてくれたおかげだよっ!」

「そうか……」


 フィアは無事か。

 なら、少しは満足だ。


「レル、駄目だよ! 目を開けて!」


 エニルが俺の体を揺する。

 だけど、どうしようもなく体が重たかった。

 そうか、これが死ぬことか……。


「いいえ、違いますです。レルさんはまだまだずっと死にませんです」


 突然、俺の体から痛みが消えた。

 恐る恐る目を開けると、俺の体は温かい光に包まれていた。

 この光は知っている。回復魔法の光だ。


 顔を上げる。


「……フィア」

「信じてましたですよ、レルさん!」


 フィアが俺の胸の中に飛び込んできて、俺は頬に柔らかいものが触れるのを感じた。

 フィアの唇だ。

 体中が軽くなる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ