【決着】内部攻撃【つけてみた】
「ミア・ザナギ・ハルフォード、てめえを倒す!」
「やってごらんなさい、レル・アンジェ!」
ミアの顔は血にまみれていた。
だが、その表情にはぞっとするような美しささえ兼ね備えていた。
これが悪魔と契約した人間か。
俺の左腕を代償に。
ステータスは1000倍どころか、既に一万倍近くまで引き上げていた。
そうでもしなけりゃ、体が動かない。
俺はミアに向かって足を踏み出した。
それだけで激痛が走る。
これ以上は持たない。
だから、これで終わらせる。
俺とミアは、至近距離で向かい合った。
「中年の拳を、受け取れ!」
最後の力を振り絞り、右腕をミアへ振り下ろす。
「そんなもの、わたくしには通用しませんわよ!」
ミアが俺の攻撃を躱そうとする。
この拳を避けられるわけにはいかない。
俺は歯を食いしばった。
「……これなら、どうだ!?」
「!」
突然ミアの動きが止まり、その顔に苦悶の色が浮かぶ。
「隙だらけだぜ、ご令嬢!」
俺のパンチは、再びミアの顔面を捉えた。
ふらふらになりながらも、ミアが踏みとどまる。
「庶民、わたくしに何をしたの!?」
「なあに、感覚を1000倍に引き上げただけのことよ」
「感覚を!?」
そう。感覚だ。
視覚や聴覚、その他諸々の感覚を100倍に引き上げた。
だが、それら感覚を処理する脳の処理能力は変わらない。
すると、どうなるのか。
脳みそが入ってくる情報を処理できずにパンクする。
俺は、俺が耐えうるギリギリまで感覚の鋭さを上げた。
ミアの能力は相手のステータスを上回る能力。
つまり、俺を超えようと感覚を引き上げたせいで、脳の処理できる上限を超えてしまったというわけだ。
「作戦勝ちだなあ、俺の!」
「庶民が!」
「レル・アンジェだ! 二度と忘れるな!」
俺は左手を握りしめ、ミアの顔面に叩き込んだ。
ミアの体は宙を舞い、屋根の上に着地した。
ミアが起き上がる気配はない。
勝った。
途端に、俺の体から力が抜けた。
見れば両手は皺だらけになっている。多分、顔もひどいことになっているのだろう。
ステータスを元に戻し、俺は這いずるようにミアの傍へ行った。
「……フィアは、どこだ?」
「その体で、あの娘を連れて帰る気ですの?」
「どんな体になろうが、俺はフィアを天界へ帰すと約束したんだ」
俺が見下ろすミアの髪は真っ白に変色していて、顔にも皺が増えていた。
まさかこいつも、本当はババアなのか?




