【とりあえず】再戦【100倍にしてみた】
「あなたの大切な聖女様なら、丁重に扱ってますわ。安心してよくてよ」
「それにしちゃあ、無粋な連中を差し向けてきたもんだな。最近は出会ったやつに毒矢を食らわせんのが流行りなのか?」
「先に手を出したのはあなただと聞いておりますけれど?」
「正当防衛だ」
「だったら、こちらも正当防衛ですわ」
「そっちから仕掛けておいてよく言うぜ」
「さて、あなたの目的はやっぱりあの聖女様ですわね」
「ああ。フィアを返してもらうぜ。それにフィアだけじゃない。この左腕の借りも返させてもらう」
「左腕?」
「てめーの依頼を受けたせいで俺は左腕を失い、森も不浄の大地になった。忘れたとは言わせないぜ!」
突然ミアが高笑いを始める。
「何がおかしい?」
「あはは! あなたがあのバカ素直なギルドの一員だったのですわね?」
「バカ素直だと?」
「いいですわ、教えて差し上げます。あの依頼の時に渡したアクセサリー、あれは悪魔召喚の儀式に必要なアイテムだったのですわ」
「悪魔だと?」
「本来なら、悪魔は多大な犠牲を払って召喚するもの。あなたたちはその犠牲を、私の代わりに払ってくれたというわけですわ」
「じゃあ、俺の左腕とあの森は……」
「私が悪魔を召喚するための生贄になったということですわね」
「な……」
俺は一瞬言葉が出なかった。
この女は、自分の願いのためだけに俺の左腕や森を犠牲にしたのか。
そして、スニード市長やエニル、この街の人々も。
「願いに犠牲はつきものですわ。あの聖女様にもそうなって頂くつもりです」
「フィアをどうする気だ!?」
「聖女などそう手に入る素材ではありませんから、有効に利用させてっもらいますわ」
……多分、この女には何を言っても通じないだろう。
倫理観とか、道徳とか、常識とか、そういうものがまるで違っている。
「なら、これ以上話してても、時間の無駄だな」
「どうするおつもりかしら?」
「フィアを、お前を殺してでも奪い取る!」
俺の全ステータスは既に100倍まで上げてあった。
体中が悲鳴を上げているのを感じながらも、俺は一瞬で屋根を駆け上がり、ミアへと拳を振り上げた。
しかしその瞬間には、俺の顔面にミアの蹴りが炸裂していた。
俺の体は屋根を転がり、落下するギリギリのところで止まった。
痛え。
あの女、どこにこんな力を隠し持ってやがるんだ?
「その程度では、私を殺せなくってよ?」
「うるせえ! フィアを返せ!」
100倍でダメなら、今度は1000倍にしてやる。
俺の体がどうなろうと、フィアだけは取り返す!




