【屋敷に】屋根の上の悪役令嬢【乗り込んでみた】
「しかし、ミアの暗殺計画があるのですよ」
「あの女を暗殺できるとお思いですか、市長?」
ふいに居間の方が騒がしくなる。
どうやら俺の家には市長だけじゃなく、その側近も来ているらしい。
居間の方には数人以上の気配があった。
俺の予想通り、市長の部下らしき男が寝室に飛び込んでくる。
その顔には焦りの色が浮かんでいた。
「市長! 大変です!」
「どうしたんだ?」
「暗殺は失敗です。今交信魔法が送られてきました!」
「ではプランをBに変更。各自潜伏先に散らばり……」
「それも駄目です。既に手を打たれ、すべて壊滅状態にあります」
「……我々の敗北ということか!?」
市長の額に汗が浮かぶ。
「ここも敵にバレています。すぐに追手が差し向けられるでしょう」
「………」
市長は無言のまま、部下から俺の方へ向き直った。
「すみませんレルさん、このようなことに巻き込んでしまって」
「何、俺は構いません。むしろラッキーくらいに思ってます」
「ラッキー、ですか?」
「はい。あの女はまだ生きてるんでしょ? だったら、俺がこの手でぶちのめせるってわけじゃないですか」
まだ体の感覚は戻ってきていない。
向こうがどういうつもりでフィアを連れ去ったのか知らねえが、俺から左手を奪っただけじゃ気が済まないというのなら、許すわけにはいかない。
令嬢だかなんだか知らないが、庶民舐めてると怪我するってことを教えてやる。
「レルさん」
市長が俺を止めようと手を伸ばすが、俺はその手を払いのけた。
「これはエニルのためでもある。あの子を泣かせてしまわないためにも、俺はあの女を討つ。市長、エニルをくれぐれも大切にしてやってください。あいつは、なかなかいい子だ」
※※※
俺は上空から街を見下ろしていた。
街の中心の、桁違いに大きな屋敷。
おそらくあれがミア・ザナギ・ハルフォードの屋敷だろう。
一目見ればそれとわかる、豪華な屋敷だ。
貧民街の、廃墟と見間違えてしまいそうな建物とは全く違う。
「じゃあ、行くか」
屋敷までの距離を一気に詰め、屋敷の屋根に着地する。
さて、問題はあのクソ女をどうやって見つけ出すかだが……。
「待っていましたわ、レル・アンジェ」
「……まさかそっちから来てくれるなんて思ってなかったぜ」
屋根の端、一番高いところに立って俺を見下ろしていたのは、漆黒のドレスに身を包んだあの女だった。




