【風呂】焼き芋【沸かしてみた】
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風呂場の方から、フィアとエニルがじゃれあっている声が聞こえる。
俺は家の外にあるかまどで火を調整していた。
風呂のお湯を調整するためのかまどだ。
薪は、ストックしておいたやつを【桁を操るスキル】で倍増させて用意したし、火もフィアの魔法で点けてもらった。
便利だ……。
あれ、もしかするとお湯を出す魔法なんてのもあったりするんじゃないか? 今度調べておこう。
相変わらず風呂場では楽しそうな声が響いている。
くそー、俺もどうにかあの中に混ざれないものか。
別にエニルの裸に興味はないが、こうして一人さみしく火の世話をしているのもなかなかさみしい。
俺はかまどの火を覗いた。
お、そろそろちょうどいい頃合いだな。
俺は火ばさみで、火の中に入れて温めていたものを取り出した。
トポモの実だ。包み紙を外すと、ちょうどいい焼き目がついていた。
皮を剥いて、茶色い実をかじる。
うん、ほくほくしていておいしい。
夜空には星が輝いている。冷たい夜風に、かまどの火が温かい。
まさしくスローライフ。悠々自適な田舎暮らしって感じだ。
「レルさん、そこにいらっしゃいますです?」
風呂場から俺を呼ぶフィアの声がした。
「どうした、フィア? エニルが何かしたか?」
「あたしはいい子にしてるよっ!」
すかさずエニルの声が飛んでくる。
「分かったよ。で、フィア、どうしたんだ?」
俺は俺のすぐ頭の上にある、風呂場の窓へ向かって聞いた。
「あのー、実はお願い事があるんです」
「あ、火が強かったか?」
「いえ、湯加減はちょうどいいんです」
「じゃあ、あれか? 石鹸がなくなったか?」
「石鹸も大丈夫です」
「それならやっぱりエニルが……」
「あたしは何もしてないってば!」
「……分かってるよ」
しかし、一体どうしたんだろう。
風呂場で困ることは大体全部言いつくしたはずなのだが。
「あの、レルさん。大変申し上げにくいのですが」
「おお、なんだ。どうしたんだ」
「私の着替えを持ってきてもらえませんです?」
「着替え? ああなんだ、そのくらいならお安い御用だ」
「そ、そうですか?」
フィアはなぜか恥ずかしそうに答える。
「ああ。どこにあるんだ?」
「ええと、レルさんに買ってもらったお洋服の袋の中に入ってるはずです」
「よし分かった。すぐに取りに行こう」
俺は火を弱め、自然に消えるようにしてから、家の中に戻った。
それにしてもフィアは何を恥ずかしがっていたんだろう?




