【少女】断る勇気【預けられてみた】
「……で、なんでまだお前がいるんだ?」
「おろ?」
夕食には、フィアの作ってくれた料理が並んでいた。
鶏肉をソテーにしたもの、昼の残りのスープ、そして付け合わせの茹でた野菜とパン。
それから、俺の向かい側に座る少女。
エニルだ。
エニルは使っていたナイフとフォークを置き、ナプキンで口を拭く。
「なんでって、レルが連れてきたからだよ。覚えてないの?」
「それは覚えてるよ。俺が聞きたいのは、どうして俺がお前を連れて帰る羽目になったのかってことだ」
「レルさん、それは、エニルちゃんのお父様が預かっていて欲しいとおっしゃられたからですよ」
俺の横の席では、フィアがパンを千切って食べているところだった。
エニルに病気をうつすようなことはしたくないし、スニード公自身もミナに狙われていて、エニルを危険にさらしてしまう可能性もある。だからエニルを預かっていて欲しい……それが彼が言っていたことだった。
あの男も、本心ではエニルをあの裏町においておきたくないのかもしれない。
その点では俺も同じだ。
だけど。
「俺はここに託児所を開いたつもりはねえんだけどな」
「にぎやかになっていいじゃないですか」
フィアはにこにこしながら言う。
「でもな、フィア。こいつを預かってる限りお前を天界へ戻す方法を探しに行くこともできないんだぞ」
「少しの間待つくらいなら、私は大丈夫です。それとも……レルさんは、私に早く天界へ帰って欲しいんですか?」
急に悲しそうな顔をするフィア。
うっ。
そんな目で俺を見るなよ……。
「そういうことじゃない。俺はフィアを追い出すつもりなんか全然ないんだ」
「よかった、安心です」
再びフィアが笑顔に戻る。
そして俺の向かい側では、やはりエニルが上品ぶって夕食を口にしていた。
「なあエニル、お前は良かったのか? 病気の親父さんの傍にいてやらなくて」
「……いいんだ。あの人だって、きっとあたしから離れたかったんだよ」
「そういうものか?」
「市長の仕事から外されたときから、あの人少しおかしくなってるんだよ。いつも何かにおびえてるみたいで、あたしを家に閉じ込めておこうとするんだ」
エニルがひったくりなんかをやるようになったのはその反動ってわけか。
しかし、これからどうしたものか。
俺はすぐにでもあの女のところへ殴り込みに行くつもりだったんだけど、エニルを預かったままじゃそれが難しそうだ。
やっぱりエニルを預かるのは断っておけばよかったな。
断る勇気も大切だ。
新聞勧誘とか、キャッチセールスとか、風俗の客引きとか。
一時間5000円ポッキリって言ったじゃん……!




