【裏通り】少女の家【通ってみた】
「……にしても、凄いところだな」
歩きながら辺りを見渡せば、廃墟と風一つで壊れてしまいそうなぼろ小屋が立ち並び、道端には痩せた老人がうずくまっている。
通りに出ると、身にボロ衣を纏っていた人が時々行き来していて、物乞いらしき人々がこちらをじっと見ていた。
表通りの賑わいとはえらい違いだ。
「レルさん……」
フィアが不安そうに、俺の方へ体を寄せてくる。
「エニル、道案内頼む」
「えーっ、これを見てもあんた、あたしを元の家に戻そうっていうの? 慈愛の心は!?」
「あいにく持ち合わせがなくてね。それに確かめたいこともある」
「…………」
不満げな様子で、エニルが歩き始めた。
思い出してみれば、俺はこの街の表通りまでしか来たことがなかった。
少し行けばこんな光景が広がってたなんて、想像もしていなかった。
街を空から見下ろしたとき、表通りみたいな綺麗に舗装されている場所はほんの一角だった。
ということは、この街も大半は今俺が見てるような貧民街で出来てるってことか。
数年前まで、そんなことはなかったように記憶している。
……ははーん、だんだん事情が読めてきたぜ。
「ここがあたしの家だよ」
エニルが立ち止まったのは、小さな、しかし頑丈そうな一軒家の前だった。
まるで何かから身を守るために作られたような家だ。
その時、俺たちの気配を察したのか中から扉が開いた。
「やっと帰ってきたのかエニル、今までどこへ行って……」
家から出てきたその人物は言いかけてやめ、俺たちの方を見た。
痩せて、眼鏡をかけた男だった。
「君たちは一体……!?」
「ええと、俺はレル。こっちはフィアです」
「こんにちは、フィアです」
ぺこりと頭を下げるフィア。
「お宅のお嬢さんを少し預かってたんで、送り届けに来たんです」
「そ、そうですか。それはどうも、娘がお世話になりました」
男は気弱そうに返事をした。
「エニル、この人はお前の父親か?」
「……うん、そうだよ」
エニルが頷く。
おそらく本当だ。
目の前の男は、いくらか痩せてしまってはいるが、俺も顔を見たことある男だった。
「なんですか? 私に何か御用ですか?」
見られていることに気付いたのか、男が俺に警戒のまなざしを向ける。
「用があると言えばあります。この街の政治についてです」
俺の言葉に、案の定男は顔色を変えた。
「……私にはもう関係のない話だ。お断りする」
「いえ、そういうわけにもいきません。まあ、少しくらいお話ししましょうよ、スニード公」
男の顔に動揺が走った。
間違いない。
この男こそが、かつてこの街を治めていたスニード市長だ。




