【料理】人には向き不向きがある【やってみた】
今度は花が咲くことはなかった。
代わりに、壊れていたはずの天井が一瞬で元通りになった。
まるで魔法だな。
いや、魔法なんだけど。
「どうですレルさん、すごいです? すごいですよね!」
「……ああ、すごいな。本当にすごい」
本当に直してしまうのか。
何か小ネタを挟んでくると思ってた。
「本当ですかぁ? なんか反応薄いですけど」
「いやいや、リアルにすごいよ。リアルリアル」
「ですよね!」
「お姉さん、すごい!」
エニルはきらきらした目でフィアを見上げている。
「へへーん、すごいです? じゃあそんなエニルちゃんにはもう一本お花を差し上げるです!」
再び手の中に一本の花を出現させ、エニルに手渡すフィア。
嬉しそうに受け取るエニル。
一人静かに死んでいこうなんて考えていた俺だが、こういう光景を見てしまうと、誰かと一緒に過ごすのも悪くないな、なんてことも思ってしまう。
「そういえば昼飯がまだだったな。二人ともお腹空いただろ? ちょっと待ってな、すぐに用意してやる」
思い出せば、朝もフィアと二人で少しのパンを食べただけだった。
「えー? お兄さん、料理なんてできるの?」
エニルが疑わし気な視線を俺に浴びせる。
「フッ……任せろ」
はっきり言えば、料理に自信があるわけじゃない。
だけど、ギルドをやめる直前くらいから本なんかで少し勉強はしてきた。
こっちへ引っ越してきてからも、左手が使えない関係でろくに料理はせずに、保存食のようなものばかり食べてきた。
しかし!
今や俺は左手もそこそこ動かせて、かつ食材もちゃんと買ってきた。
ようやく勉強の成果を発揮する日が来たようだな!
※※※
「ま、まあレルさん。人には向き不向きがありますですよ」
案外、うまくいかないものだ。
スープを作ろうと思ったらお湯を噴きこぼしてしまうし、ベーコンでも焼こうと思えば焦がしてしまった。
具材を切るところまではうまくいってたんだけどな。これは練習が必要だ。
「そーだよレル。ま、お姉さんの作ったサンドイッチでも食べなよ。おいしいよ」
サンドイッチで口の中をいっぱいにしたエニルが、俺に取り皿を勧める。
テーブルの上には、フィアが作ってくれたサンドイッチとスープ、そしてサラダがそれぞれ大皿に盛りつけられ、並べられていた。
この聖女、なんと料理もできるのだ……。
「天界人は基本ヒマですからね! 料理や掃除が趣味みたいなものなんです」
そうなのか。
神様、もっと働けよ。
そんなだから世の中が平和にならないんだよ!
別に俺は世界平和に何か貢献しているわけではないけれど……。
中年の辛いとこね、これ。




