【右手】聖女ジョーク【治ってみた】
奇妙な空気が流れる中、フィアだけが、
「わっはっは、聖女ジョークです!」
「……フィア、妙な冗談はやめてくれないか」
「あんまりおもしろくなかったですか?」
「え、うん」
「ううっ、真顔で言われると辛いです! では今度こそ面白がらせてみせますよ、見ててくださいです!」
「いやいやもういい、フィア。気持ちは分かったから。とりあえず俺の右腕をどうにかしてくれないか?」
「あ、そういえばそっちが本題でしたですね! 私が咲かせたこのお花は、エニルちゃんに差し上げるです」
「ありがとう、お姉さん!」
フィアから花を受け取り、嬉しそうに笑うエニル。
へえ、笑うと可愛いじゃないか。考えてみれば、俺にも娘がいておかしくない年齢だ。もしいたなら、人生変わっていただろうか……。
あ、その前に結婚相手がいねーわ。わはは、こりゃ一本取られたね。
……言ってて悲しくなってきた。
「レルさん、それでは今度こそやるですよ!」
「おお、頼むぜ!」
「【ナオルルナオル・オルルナル】!」
フィアの指先から緑色の光が発せられ、俺の傷を癒していく。
徐々に痛みが引いていって、光が収まったころには完全に痛みは消えていた。
恐る恐る包帯を外してみると、
「おお、さすが聖女!」
さっきまでズタズタになっていた右腕の傷は、完全に消え去っていた。
「へっへーん、これが聖女パワーです」
再び胸を張るフィア。
「すごいな。魔法、習ってたのか?」
「いえ、ただ本に書いてあった通りに呪文を唱えただけです」
だとしたら、すごい才能だ。
普通、魔法を使えるようになるには、魔力の操作やイメージ法の訓練で最低でも二年はかかると聞く。
疑ってたわけじゃないけど、本当にフィアは聖女なんだな。
「すげえよフィアは。可愛いし、魔法も使える」
「えへへ。レルさんのお役に立てようで何よりです」
魔導書片手に、フィアが照れたような笑みを浮かべる。
それにしても、本当にすごいな。あんなにひどかった右手が元通りだ。今度なにか怪我した時も治してもらおう。
「あ、そうだ、レルさん!」
「どうしたフィア、急に大きな声出して」
「もう一つ面白い魔法を見つけたんですよ。見ててくださいです!」
「なんだ? 今度は花束でも出してくれるのか?」
「違いますですよぉ! いいですか、ちょっとこっちへ」
俺たちはフィアに連れられ、穴が開いた天井の真下へやってきた。
フィアが降ってきたときに開いた穴だ。
「これをどうするんだ?」
「ふっふっふ。私が元に戻して差し上げるですよ!」
フィアは自信ありげに両手を穴に向けて、呪文を唱えた。
「【ドルドルモドル、モモドルル】!」




