【再び】手品みたいなもの【若返ってみた】
「じゃあさっそく俺の右手を治してくれないか? 痛くて死にそうなんだ」
「……あの、レルさん、質問してもいいです?」
「なんだ?」
「ちょっと老けましたです?」
うっ。
「いや、実はそうらしいんだ。なぜだろうな」
「もしかしたら、スキルを使いすぎると老けるのかもしれませんです。でも、今のレルさんも渋い感じで私は好きですよ?」
「あ、そ、そう?」
「そうです」
そう言って、フィアはこともなげに俺の頬に唇を当てた。
ごく自然に。なんのためらいもなく。
実際、俺も一瞬何をされたのか分からなかったくらいだ。
「……あ、ごめんなさいですレルさん。人間のみなさんはあまりこういうことはなさらないんでしたですね」
しまった、という顔をするフィア。
「い、いや、俺は別に気にしてないんだぜ。本当だぜ」
ただ、今この場には俺たち以外の人間がいる。
そう、エニルだ。
人に見られると少し恥ずかしいかもしれない。現にエニルも口が開いてるし。
「あのなエニル、あんまり気にしないでくれ」
「う、うん。気にしない。でも、それ、どういう手品なの?」
「手品?」
「お姉さんにキスされるとレルが若くなるのは、手品じゃないの?」
「なんだって?」
エニルの言葉に、俺は再び鏡を見た。
そこに映る俺は、再び20歳前後のころの俺に戻っていた。
えーっ!? すげえ! これが聖女効果!
あれ、でも待てよ? フィアは聖女の力を失ったんじゃなかったのか?
俺の視線に気づいたのか、フィアが、
「うーん、私にも分かりませんです。不思議な人ですね、レルさんは」
「俺が? ……そうかな」
「そうですよ。だって、一人で静かに暮らしたいと言いながら、私やエニルちゃんまでお家に入れちゃってるんですから。きっとレルさんにはほかの人にはない不思議な魅力があるんです」
そう言われると悪い気はしない。
まあ、誰彼かまわず家に上げるお人よしって言われてる感は否定できないけど。
「なんかよくわかんないけど、あたしの知らない世界があるんだね……」
まるで大人のようなことを呟くエニル。
「お前は後であの街に連れて帰るからな」
「ええっ!? レル、それは殺生だよ!」
「まあまあ二人とも、ちょっと待ってくださいです。とりあえずレルさんの体を治すですよ。ほら、レルさん、右腕を出してください」
「あ、ああ。頼む」
俺が右腕をフィアの方へ差し出すと、フィアは呪文を唱え始めた。
「【オルナオルオル、ナオルオル】」
そして、ポンッと……。
フィアの指先に綺麗な花が咲いた。
俺もエニルも、ぽかんとしてしまった。




