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【荷物】悪役令嬢登場。【取りに戻ってみた】


 右手の応急処置を済ませた後、俺は再び街へ戻り、道端に放置していた資材や食料を回収した。

 フィアとあのひったくり少女はとりあえず留守番させておいた。


 案の定、俺が地面を派手にぶっ壊してしまったところには人だかりができていて、ちょっとした騒ぎになっていた。


 すぐに逃げてきてよかった。さらに厄介な事態になるところだった。

 よし。一応買ったものは全部無事だな。すぐに帰ろう。

 俺が再び瞬間移動で家に帰ろうとしたとき、人だかりの様子が変わった。

 一斉に俺の方を振り返りやがったのだ。

 ヤバい、何か感づかれたか?

 いや、違うな。こいつらが見てるのは俺じゃない。俺の背後だ。

 俺も人だかりに習って後ろを振り向く。


 そこには数人の従者を引き連れた馬車が停まっていた。

 黒地に金色の装飾が施された、めちゃくちゃ派手な馬車だ。

 従者の一人がその戸を開ける。

 馬車の客室から、一人の女が姿を現す。


 黒よりも深い漆黒のドレス。金色の長髪。そして意志の強そうな眉と青色の瞳。彼女の纏う雰囲気は、威厳のようなものさえ感じさせた。

 その姿を見た瞬間、俺は自分の目を疑った。


「貴様、頭が高いぞ!」


 数人いる従者の内、一人が俺に向かって怒鳴る。

 気づけば、立っているのは俺だけで、他の人だかりはみんな同じように両膝をついて頭を垂れていた。あの女に向かって。

 俺は左手の疼きを感じながらも、慌てて民衆の中に混じって膝をつこうとした。


 だが。


「もう遅いですわ。その無礼者を捕えなさい」


 凛とした、人を従わせることになれた声。

 あの、漆黒ドレス女の声だ。


「はっ!」


 従者が二人、俺の体を両脇から抱え、女の前に引きずっていく。

 いかん。マズいことになった。

 面倒に巻き込まれるつもりはなかったのに。


 しかし。


 しかしそれ以上に。

 左手の古傷が、痛む。

 心臓が早鐘を打つ。

 気づけば俺は漆黒ドレス女の目の前に座らされていた。両脇には従者が控えている。

 ドレス女が俺を見下ろす。


「あなた、わたくしが何者か知っていて?」

「……いや、知らねえなあ」


 ぴくっ、と女の眉が不機嫌に動く。

 その瞬間、従者が俺の後頭部を蹴った。思わず地面に倒れこむ。


「貴様! 身をわきまえろ! この方こそハルフォード家のご令嬢にしてこの街をお治めになっている、ミナ・ザナギ・ハルフォード侯爵令嬢であるぞ!」

 

 思わず俺は奥歯を噛み締めていた。


 この女が、ミナ・ザナギ・ハルフォードなのか。

 この、俺から冒険者としての資格を奪った女が。



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