【辺境に】空から女の子が!【来てみた】
女の子が降ってきた。
ちょうど昨日の夜、俺の家の屋根を突き破って。
「困った……」
おかげで今、家の屋根には大きな穴が空いている。まだローンも残っているのに勘弁してくれ。
俺ももう五十を超えた中年だ。
体の自由も利かなくなり、ギルドの冒険者をやめて、この辺境の地に引っ越してきたのがちょうど前の満月の日。
ようやく羽を伸ばして暮らせると思った矢先に屋根を壊されてしまった。雨でも降ってきたらどうしよう。
女の子の方はといえば、もう一晩中眠っている。俺のベッドで。だから俺は昨日、床で寝るしかなかった。五十も過ぎれば全身にガタが来ている。今日も朝から全身がきしむように痛い。
思い出してみれば、俺は冒険者としてろくに成功もできなかった。周りの奴らが次々と大物を仕留め多彩な戦闘スキルを身に着けていく中、俺はいつまでたってもろくな技が身につかなかった。
特に四十のころ怪我した左手は今もうまく動かせず、ここ十年はモンスターとも戦っていない。怪我してからはずっとギルドの書類仕事ばかりやってきた。
「はあ……」
俺はため息をついて、木の椅子に座りこんだ。木材がきしむ音がする。ひょっとすると粗悪品をつかまされたかもしれない。ちょっと力をいれると壊れてしまうような粗悪品だ。
「まあ、俺も人のこと言えねえけどな」
俺の左手も、ちょっと傷ついただけで使い物にならなくなってしまった。
正確に言えば、森の奥に生息するフェンリルとの戦闘で、だ。
幸い俺は右利きだったからなんとかなったものの、もし左利きだったらと思うと恐ろしい。とてもじゃないが生活なんてできなかった。
だけど、もし左手が無事なら、俺は冒険者として成功していたか?
いや、そんなことはないだろう。せいぜいその日暮らしが関の山だ。そうじゃなきゃ今頃、剣術の師範の仕事なんかが舞い込んできていたはず。
「所詮、その程度の人間さ、俺っていうのは」
十年間の事務仕事で衰えた体。白くなった髪。顔にはしわも増えた。
と、その時、寝室の方で物音が聞こえた。女の子が起きたのかもしれない。
俺は立ち上がり、寝室へ向かった。
ギルドの退職金で新築した家なのに、もう傷物になってしまったなあ、なんて、まだ真新しい廊下の床なんかを見ながら思った。
寝室のドアを開けようと俺が右手をドアノブへ伸ばした瞬間、ドアは勝手に開いた。
「あ?」
思わず間抜けな声が出る。
ドアの向こうには昨日助けた女の子が立っていた。
それも、やはり裸のままで。
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