故郷の風
あの頃のにおいを風が運んでくる
あの頃 幾度となく通ったこの道は
今はもう 年に数回しか通らない
あの頃 無邪気に駆け回ったあの場所は
今はもう 民家が軒を連ねている
時間を忘れ どろんこになって遊んだ日々は
今はもう 遠い昔の記憶
「また明日」
そう言って手を振ったあの頃
「次はいつ会える」
「久しぶり」の回数が増えた今
あの頃 無心で追いかけたソレは
今はもう そこにはない
あの頃聞こえていた笑い声は
記憶の隅で小さくなっている
あの頃返ってきた「おかえり」の声は
どこを探しても見つからない
あの頃の当たり前が 当たり前じゃなくなった今
それでも風は
あの頃のにおいをのせて 吹いている