お散歩 1
ロールが掃除を始めてから、アウティアとソウは城の内部を散歩していた。これを最初に言い始めたのはアウティアで、本人的にはペットの散歩と言い張っているが、実際はロールの邪魔になるのが嫌なことと、ソウにこの城のことを少しでも知ってもらいたいという意図があった。
「なあ、この城、一体どんだけ広いんだ?」
「何言ってんの、一日で回り切れるほど狭くないわよ。今日はこの階だけよ。」
「え、嘘⁉」
この魔王城には、天災クラスの魔物以外の種族がすべて暮らしている。(といっても、その種族全員がいるわけではなく、その種族の一部だけである。)そのため、魔王城には数多くのダンジョンが配置われている。よって、この城の内部をすべて把握しているものはいないとまで言われている。
「ロールとは・・・仲良くしてよね。」
「はいはい、こっちもまたあんなことになったら大変だからな。」
「あっそ、これからは他の魔物たちにも会ってもらうから、覚悟しときなさいよ。」
覚悟しなきゃいけないほどなのか・・・ソウは、今まで倒してきた種族の魔物に会うことになると思うと、途端に気が重くなった。いよいよ他の魔物たちに、自分が魔王の娘の奴隷になったことを知られていくのだ。そう思うと、かつての勇者は、自分が魔王に敗北したのだと、再確認したのだった。