メイド人形ロール 3
ロールとアウティアは落ち着いた後、部屋に戻った。
「げ、戻ってきた。」
彼は相変わらず床の上でごろごろしていた。いかにもめんどくさそうな目でこちらを見ている。
「げ、って何よ。本当に生意気ねあんた。また懲らしめてもいいのよ?」
アウティアはニッコリ笑って言った。男の体は少し硬直した。
「い、いや~はっは。あ、そうだ!さっきは一体どうしたんだ?」
「・・・ったく、わざとらしい。と、まあいいわ、あんたに紹介してあげる、この子が私のメイドのロールよ。」
ロールは少し前へ出て、礼をした。彼女の顔にはまだ不安げな表情が残っている。アウティアは別に謝らなくてもいいと言ったのだが、ロール本人が謝らなければ気が済まないらしい。こういう頑固なところは、メイドとして創られた、仕えるものとしての本能がそうさせるのか、それとも元々そういう性格なのか、最近人形としてのロールの機能は調子がよくないので、いろいろと、アウティアには思うところがあった。
「先ほどはすいませんでした。えっと・・・」
ロールは男の目を見た。
「ああ、俺は・・・」
「あなたの名前ね!それならもう決めてあるわ。」
「はあ?何言ってんだ?」
そう言いながらも彼はもう悟っていた。自分が今囚われの身であることを。彼は魔界にいて、帰る場所ももうない。何よりも、彼女には逆らえないことが身をもってわかっていた。自分の体はもう改造されているのだ。逆らい続けたら一体どうなることやら、想像すらできなかった。
「あなたの名前は《ソウ》よ。」
「お嬢様、その名前は・・・!」
「別にいいでしょ。」
アウティアはふんっと鼻を鳴らしてメイドをあしらった。
「はい。お嬢様が望むのならば。」
何やら訳ありな名前らしいといことだけは彼には分った。何より自分が、魔王の娘でしかもメイド付きのお嬢様の奴隷ということは、とりあえずはおとなしくしていればひどい目には合わないだろうことはわかっていたので、これを機に腹をくくろうと彼は決めた。
彼は両手を上げて、降参のポーズをした。
「わかった。ソウだ。よろしく、ロールさん。」
「何よ、意外と素直なのね。もっと抵抗するかと思ったわ。」
「俺は大人だ。」
「ハイハイ。えっと・・掃除、ありがと。」
「いえいえ。掃除っつっても、この部屋しかしてないし。」
アウティアは自分が朝この部屋を出る前、自分がソウに向かってこの部屋から一歩も出ないように言ったことを思い出した。案外こいつはいいやつなのかもしれないと思った。
「全く、仕方ないわね。じゃあ、他の部屋はロールに任せようかな。」
「お嬢様・・・。」
「お願いできる?」
「はい!」
この時のロールの笑顔を見て、なぜ今まで意地を張っていたのだろうかとアウティアは、恥ずかしくなった。