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時は経ち、西部都市トーガンによる侵略完了から一か月後。
仮面をかぶった男は目的の蛮族の国ではなく、その国より二つ森を挟んだ村にいた。
本当はすぐに目的地に行く予定だったのだが、山賊とあってしまった為、口八丁手八丁で適当なことを言っていたら山賊の仲間入りすることになった。それはそれは山賊ごっこを楽しんでいた。
小さな村を山賊の一味となり、適当な槍を使って愚かな人間もどきを刺し殺していく。
適当に力を抜きながら突き方の人体実験をしていくといつの間にか山賊以外立っているものがなくなった。
襲った村の家の数にしては女子供が少ない。
どうやら他もそう思ったらしく、森に探しいくぞと号令が聞こえたところで、ロエは最初から気づいていたあるとこを伝えるために手をあげた。
「デンのぉ、お頭ら~」
「なんだ?ロエ」
「ここ見てくださいよぉ、地下室ありますよ」
山賊の頭デンにロエは斜め下の地面に木の枝を向けた。
それを聞いたデンは「がはは」と笑いながら道理で女子供が少ないと思ったぜといいながらロエ含めて6人で地下室を掘り起こし、階段を降りていった。
少し長い階段を降りた先には大きな空洞になっており、案の定そこには人が30人ほどいた。
「いやがったぜ。ひひ! 涎が垂れる。こんなにいたら捌くのが大変だぜ」
デンは好きにしていいといい自らも欲望を解放した。
ロエは静観した。
所詮は人もどきの内輪揉めである。
醜い争いが見れるとは、山賊というのも存外いいものだと思った。
「娘に手てを出さないで!!」
デンが女性を踏みつけながら少女の服を剥がそうとしていた。
踏みつられている女性が泣きながら懇願する。
だか、デンとその配下の暴虐がほんの僅かに止まっただけであった。
「ぐへへ。はぁはひひひ。 おい聞いたかよ。おもろいぞ」
デンの行動が止まることはなかった。
ロエは動かなかった。
動けなかったのでない。動く気にならなかったのだ。
「おい、おまえもぼさっとしてないで楽しめよ」
デンの配下がそうつぶやいた。
次の瞬間。
あたりに赤い噴水ができた。
ロエは自分が認識しているよりもこの下等生物が嫌いだったらしい。
「あらら~」
ロエは自分がしたことがいまいちピンときてなかった。
なぜ、こんなつまらない殺しをしたのかもわからないし。
なぜ、いま殺したのかもわからない。
それは先ほどよりも長く静寂だった。
一番最初に理解したのはデンだった。
デンは激怒し、ロエを殺すように配下に命令した。
ロエは笑っていた。
腕の立つ武人であっても敵わないロエに向かって行った末路は、血の池だった。
「お、おい。なんだよ。なんでだよ」
デンは震えながら距離をとり、得物は音をならしていた。
ロエの足さばきは速く、デンにしてみたら瞬間移動のように見えただろう。 デンの持っていた得物を腕を千切りながら奪い、ロエはいたって静かに何も話返すこともなく。その首を断ち切った。
それは少し黒ずんだ赤だった。
「ついつい、やってしまいました。これで山賊ごっこも終わりですね~。 まぁ、もうそろそろ仕事しないとと思っていたのでいいのですが」
ロエは赤黒の仮面をつけ、独り言を話しながらゆっくりと歩きだす。
後ろには生存するものはない。
地上に上がると見張りをしている山賊が1人いた。
ロエは横をすれ違いながら「交代です」と言う。 山賊は嬉しそうに地下室に降りて行った。 その先の地獄も知らずに。
ロエはとりあえず目的の町に向かった。
実は山賊ごっこは暇潰し以外にも地理に詳しくなるというメリットがあった。
ゆっくりと歩きながら町の名前を思い出していた。
そうだ、町の名前はピンドットだ。
思い出したことにより、苛立ちげだった足取りは軽やかになり、森を抜けていくのであった。