プロローグ
はじめまして、こんにちは、ごきげんよう。どうか二番煎じどころではない拙作ですが、楽しんでくれたら嬉しいです。
感想はどしどし募集しています。賞賛批判構いません、ぜひお願いします!
人間の『娯楽』に対する執念は、偉大だ。
人は暇という存在を忌避する。奴隷を行使する事で余暇を得た古代のギリシャ人は、その暇に飽かせて哲学を作り上げた。
古来より物語は存在し、玩具も数え切れない程にある。近代ではゲーム技術が生まれ、様々な企業が鎬を削っている。
―――そして凡そ十年前、娯楽の最上級とも言えるゲームが誕生した。
最新鋭の技術であるVR……仮想現実。その技術を応用したフルダイブ型ゲームだ。
過去その発想は無かった訳ではない。だがそれは軍事面などで利用される特別な技術であった事と、倫理面や安全性といった側面によって実現せずにいた。
……だが。変態技術国家と呼ばれる日本は伊達ではなかったのである。
2XXX年。日本企業『ノヴァ』がVR産業に参入。その二年後ゲーム企業を吸収合併。そして更に六年後、世界初の民間用VRシステム『イクシオ』を完成。法的手続きなどを経て二年。
―――ノヴァの参入から十年。娯楽のジャンルに新しくVRという技術が生まれたのだった。
さて。それからまた十年。今やVRは生活の中枢に食い込む程著しい発展を続けている。問題もなかった訳ではないが、その利便性にはどうしても反対意見は下火にならざるを得ない。
そしてゲーム業界では様々な分野のゲームが登場した。レーシングゲームやシューティングゲームといった物はその臨場感を大幅に向上させた大成功の類いである。
だが最も人気のあるジャンルは別の物である。そのジャンルとはVRMMO。そしてその中でも最多ユーザーを誇るのが元祖VR開発のノヴァが生み出したゲーム、『エリス』だ。
発売当初からノヴァの作品として話題には欠かず、発売当日には長蛇の列が生まれた。第二期第三期と販売されてもほぼ即日完売、一年経った今でもユーザーは増え続けているらしい。
内容も異様な程作り込まれており、都市伝説として『エリスは異世界に繋がっている』なんて物があるらしい。
……話が逸れた。
VRMMOゲーム、エリス。俺はその古参ユーザーと呼ばれる存在だ。第一期から前線でプレイを続け、色んなイベントにも参加。嫌な事もありはしたがそれ以上に楽しい、素晴らしい世界がここにはある。その魅力は決して独り占めする物ではないし、新規ユーザーは大歓迎。
もしかしたらウチのギルドに参入してくれるプレイヤーだって居るかもしれない。なら誘う事も吝かではない。
若しくは逆にマナーを知らない人間も居るかもしれない。その場合注意喚起を必要とする場合もあるだろう。まぁ、流石に居ないだろうが。
そんな理由で俺は第五期ユーザーが溢れた初期開始点の街、『始まりの城下』に居る訳だが…………
「……あの、さ」
「……なんでしょう」
「…………なんで俺は路地裏に連れ込まれた挙句土下座されてんの?」
何故、何故俺は見ず知らずの初心者に。しかも女の子に素晴らしく綺麗な土下座を披露されているのだろうか―――
これはとあるゲームの廃プレイヤーになりきれない男が、初心者の少女をあの手この手で鍛え上げる成長?のお話である。