第1話 入学
入学式の後は教室まで案内され、出席番号順に座らされた。机の右上に、「13番 神田瑞希」と書かれた名札が貼り付けられていた。ちなみに、「神田瑞希」とは私の名前だ。他には、「私立美阪女子学園中等部入学説明書」という長ったらしいタイトルの冊子とか、連絡帳とか、まあ色々置いてあった。みんなが席に着いたのを確認すると、担任の教師がこれまた長ったらしい説教臭い話をし始めた。入学式の校長の話と同じく、「女らしさを磨く」だとか「礼儀を身につける」だとかいう内容だった。
これだからお堅いお嬢様学校は嫌だったんだ。決して私は苦しい中学受験をしてまでこんな学校に入りたかったわけじゃない。こうなったのもバカな両親のせいだ。「全部お前の為だ」とか「後で絶対、受験してよかったって思えるわ」とか根拠も何もないことを言われ、半ば強制的に受験させられた。子供の意見には耳を傾けず、最終決定権は親にある家庭なのだ。私のことを思ってやってくれているのだろうが、正直ありがた迷惑だった。確かに中高一貫で高校受験をしなくてもいいのはありがたいが、六年間もこんな学校で過ごせと言うのか。嫌なんだよね、ここの校風。特に「女らしく」とか「礼儀正しく」とか絶対無理。横目で周りを見てみると、不満そうな表情の子達が数人。私と同じようなことを考えてる子もいるんだろう。生徒は一クラス40人。それが六クラスある。私は正直、クラスにとけ込む自信がない。一人でも知り合いがいるならまだしも、周りは知らない人だらけ。人付き合いの苦手な私には、自分から話しかけるなどという挑戦は絶対に出来なかった。なので誰かが話しかけてくれるまで待つつもりだった。しかし、思った程待つ時間は長くなかった。
「私、佐々木理恵。これから一年間よろしくね」
隣の席の少女が話しかけてきたのは次の休憩時間だった。少女は人の良さそうな笑みを浮かべていた。
「神田瑞希・・・よろしく」
呟くように言った。大体この時点で、私のことを「暗い」と感じた人はもうあまり話しかけてこないし、「クール」だと感じた人は結構話しかけてくるようだ。もともと、みんなで騒いだりするのはあまり好きタイプじゃない。
「“神田瑞希”?ふーん。じゃあ、瑞希って呼んでいい?」
「いいけど・・・」
「私のことは理恵って呼んで!小学校の時からそう呼ばれてるから」
(明るい人だなぁ・・・)
屈託のない笑顔を見て思った。とりあえず、悪い人ではなさそうだ。
佐々木理恵は、優しく明るいしっかり者で、友達もすぐにたくさんできた。どんなタイプの子ともすぐに仲良くなった。私も入学して一ヶ月経つとクラスに数人かは友達ができたが、それは全員理恵を通して友達になった子だった。その中でもよく話すのは、伊藤麻衣、杉村純子、西野知世の三人だった。彼女たちとも最初はやっぱりドギマギした会話になってしまったが、少しずつ打ち解けていった。もちろん、理恵との会話もすっかり慣れて、こちらから話しかけることも普通にできるようになった。私は理恵のようにクラス全員と仲良くなることはできず、むしろ生意気な態度(に見えるらしい)がクラスのリーダーグループから反感を買ってしまった事も少しあったようだが、それなりに良いクラスになれたと思った。
前に書いていた小説ですが、私の力不足の為、最初からやり直すことになってしまいました・・・。途中で行き詰まってしまって。ごめんなさい。今度から気を付けます。