母がいない朝
人間、大切なものを失うとどうなるんだろう。心がポキッと折れて何も出来なくなるのか。無心になったらいつ心を取り戻すのか。。
大人は強い。子供の私は、ただもがくのに必死で。大人の背中を見ていた。
もうすぐ夏が来るだろう。少しめんどくさい衣替えの時期。
優しく微笑む母の姿、いつも座ってた場所に居ない。
一緒に見ていたドラマも途中で終わったまま。
笑っていた母の姿はもう居ないのに、そこにはただ椅子だけが置いてある。
優しい母の匂いも無くなった初夏の日。
母はこの世界、、私の世界から消えた。家は静かになった。心がぽっかり空いた。
数年前に、うつ病と診断され頭を抱えることも何度かあった。それでも心の底では母が好きだった。何をするにも母に聞いたり、相談をしたり。
時々病気のせいで母を嫌うこともあった。
でも今になって、実際母が亡くなって、涙がポロポロと止まらない。二十三歳の大人でも心はまだまだ子供のようだ。
母は偉大。
その言葉の通り母の存在は大きかった。高校生の時は、母の存在を嫌がり抜け出したいと思ったこともあった。
カゴの中に入れば出たいと思い、カゴから出して貰えたと思ったら飛び方を知らず、結局カゴの中に戻るか。それともそのまま飛べず下に落ちるか。
突然だった。いつもと変わらない夜。
「また明日も仕事か」
そうため息をつきながら帰った。
母は、変わり果てた姿になっていた。遺書もなく。
ただ、母が自ら死を選んだ姿、、。
ただこの世から居なくなっていた。冷たい身体に暗い表情の母。
咄嗟にとった行動は、心臓マッサージ。不慣れながら、昔母に教わった心の中で歌うとリズムが取れると言われたことを思い出した。
歌は「アンパンマンマーチ。」
最初聞いた時は、「本当に?」なんて思った。
でも、ほんとに正しかった。医療関係で働いていた母の知恵。
実際母に対して役に立った。実際助けることは出来なかった。
涙が溢れる中、リズムを刻んだ。明るいリズムそのものが、まるで違う音楽のように暗いリズムに。救急車が来るまでの間とっても長く感じた。自分の心は乱れ。リズムを刻みながら叫んだ。
「母さん母さん、母さん!!!」
病院へ運ばれた。
一時間も経っていなかったと思う。その時間は居心地が悪く、まるで夢の中にいるようだった。無で、涙も出なかった。
一言も話さなかった。話す言葉も出なかった。その間母は戦ってた。でも母は天国に、まさか。まさか亡くなるなんて。
夢なのかと、「フフっ」て笑ってしまった。それと同時に目から冷たい何かがこぼれ落ちた。私はそのまま気を失った。
「いろは」
と呼ぶ声が聞こえて目を覚ました。目を覚ますと、病室。
窓の隙間から風が吹いた。同時にカーテンが揺れた。もう朝だった。
父の声で起きる日なんて今までなかったから、なんだか面白くて。何事かと。どうしてここにいるの?って父に聞いたら。気を失ったらしい。
なんで。って思ったけど、急に思い出した。
そうだママが居なくなったんだ。涙がまたポロポロこぼれた。現実と受け止めるには、まだまだ未熟。
沢山泣いた。体の水分全部でたんじゃないかっていぐらい。いっぱい泣いた。
その後職場にも連絡をして、お葬式の手続きやらなんやらで、数日が一瞬に感じた。悲しい気持ちを紛らわすかのように、家族と過ごした。
気が付けば数日が過ぎていた。
葬儀も終わり、私は仕事へ復帰した。他の家族を見るたび涙がでた。自然と、自分とその家族を比べてしまっていた。ずっと暗闇の中にいた。
でも周りの人は優しく、暖かかった。次第に暗闇へ光が差し込むように、私は少しずつ日常へ戻っていった。
人は凄い。
時には暖かく。またときには言葉がナイフのように冷たく刺さる。人間不安定な生き物だと。
母の温もりを感じることはもう二度とない。
今日は晴れてた。雲ひとつ無い。快晴の空。また一日が始まる。
〜追伸〜 母へあなたがこの世を去った次の日は、とっても晴れてました。雲ひとつない青空でした。
辛いと思った次の日も、もしかしたら楽しい一日だったのかもしれません。あなたの選択を責めるつもりもありません。
今まで本当によく頑張ったね。
私は今笑顔で毎日楽しい日々を過ごしています。
母さんが居なくなって数年が経ちました。実を言うとまだまだ恋しいです。
母さん、私はもうすぐ母になります。




