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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
帰り道

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#7



「匡、ボーナス出たら何に使うんだ?」


食事を終え、毎週欠かさず見ているバラエティ番組を前に寛ぐ。友人というよりは家族のような関係だ。ソファに深くもたれて、熱いコーヒーを二人で飲んだ。

「貯金と、実家に少し仕送りして。それから……清心にも今まで世話になった分、返していきたいな」

これはかなり真剣に言ったんだけど、何故か彼は容赦ないデコピンをしてきた。

「痛い! 何?」

「馬鹿。昔のことはいいんだよ。どうせなら将来のために管理しといて」

清心は済まし顔でコーヒーを口にする。

ところが言葉の意味が分からず、匡は首を傾げた。

「えっと……将来って……」

「色々あるだろ。ここよりもっと広い部屋に二人で引っ越すとか」

テレビの音が一瞬聞こえなかった。

清心の声はむしろ小さいぐらいなのに、今も鼓膜に張り付いている。

「二人で……まだ、俺と一緒にいてくれるの?」

「逆に訊くけど、出て行くつもりだったのか?」

「い、いや……でも、ずっとここにいるわけにはいかないかなって」

狼狽えながら言葉を零すと、清心は大袈裟にため息をついた。座面に手をつき、こちらへ寄りかかる。


「前にも言ったろ。嫁に来いよ、って」

「……」


あぁ。

確かに言った。……覚えてる。


一年前、俺が倒れた日。この家の廊下で、よく分からないプロポーズをしてくれた。

冗談だと思ってたけど、本気で言ってくれてたんだ。

「いいの? 俺なんかで」

「俺なんかとか言うなよ。そんなネガティブ思考じゃ、またあの十字路に迷い込むぞ」

「それはやだな。……清心と、ずっと一緒にいたい」

悲しくて泣いたことは数え切れないけど、嬉しくて泣いたことは思い出せない。

匡は目元を軽く擦る。

そんな彼を見て、清心は優しく微笑んだ。


「これからは恋人として。改めてよろしく」

「うん! こちらこそ」


手を取り、繋ぎ合う。

離れることがないように強く握った。


彼が好きだ。

一緒にいると時間を忘れてしまいそうだけど、もうここは時間の止まった世界じゃない。有限の中、与えられた時間を大切にしたい。


人には言えない、言っても信じてもらえない体験をした。……今も見えない力で結ばれている。

二つの道が交差した場所に迷い込んだから手に入れた。

何年先もずっと一緒にいられるように、あの出来事は胸の中に仕舞っておこう。







────十時十分、十字路で。





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