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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
帰り道

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61/63

#5




季節がひとつ眠りに入り、新しい季節が目を覚ます。

熱を奪っていた冬が終わりを迎え、暖かい陽気の日が増え出した。心無しか街を歩く人々の顔も明るくなった気がする。

川沿いの道は桜色の絨毯が敷き詰められ、通る人の髪や服にはらはらと舞い上がっていた。


同じように道を歩く匡の髪にも、小さな花びらが落ちる。どんなに払っても風が吹けば頭に落ちてくる為、もう気にしないで歩くことにした。

見る者の心を和ませる桜並木。けど去年の自分はこの景色を見ても何とも思わなかっただろう。ただ無気力に、スケジュールに沿った行動を起こすので精一杯だった。

今は違う。

あれから一年。匡の病状は快方に向かい、あっという間に退院して生活を正していた。


原因が分からずじまいのため医師は腑に落ちない様子だったが、自分だけは分かっている。

現実に帰ったことで、今はひとりの人間として考え、行動ができている。

幸いだったのは、十年間の記憶も自動的に頭に流れ込んできたことだ。あまり代わり映えのしないフリーター生活を送っていたんだろうけど、それでも十年おいて浦島太郎状態は困ってしまう。

二十六歳の自分は、これから第二の人生と言っても過言じゃない。改めて一からやり直すつもりだ。

不況な上に職歴がないため苦労したが、二ヶ月前にようやく自動車会社の営業に就職できた。今は研修も終え、何とか生活できている。


両親には相当驚かれた。まるで別人みたいだと言われたけど、実際その通りだ。一度植えつけられた印象はそう簡単には払拭しない。

ひとしきり喜んだ後はどうせすぐに辞めるだろう、身体を壊すだろう、といった目で見られた。それも絶対ないとは言いきれないけど、気持ちだけは揺らがない。

強くなると心に誓い、家を出た。今はまだ溜まり溜まった納付書や必要物品で給料が消えていくけど、落ち着いたら仕送りをして、ちゃんとやってることを伝えたい。

そして一番最初に喜んで欲しいのは、同じ家に暮らす“彼”だ。


「……ただいま~」


今ではすっかり慣れた挨拶。靴が脱ぎ散らかり、荒れてる玄関。今日こそ片付けようと思いながら先へ進んだ。

奥へ進むほどに、何やら良い匂いがしてくる。不思議に思いながら台所を覗くと、ひとりの青年がコンロの前で料理を作っていた。


「おかえり、匡」


あの頃から何も変わらない、清心だ。




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