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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
寂しがりや

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6/63

#6



これは夢物語だ。

SF映画。子どもに夢を与える絵本。ファンタジーゲーム、現実では有り得ない空想の世界。


有り得ない……はずなのに……。


清心はこの不思議な経験に心を奪われた。大遅刻なんてどうでもいいほどの高揚感に支配されている。

会社に着いて上司に謝罪してからはずっと上の空だ。

結局丸一日、仕事は手付かずで終了した。

あの少年が気になって仕方ない。この昂った気持ちを落ち着かせる方法は一つしかなかった。


どうにかして、もう一度あそこへ行けないだろうか。その願望だけが頭の中で降り積もっていた。

しかし車に轢かれかけるのは勘弁だ。飛び出したら迷惑極まりないし、下手したらあの世行きだし。何があそこへ行く条件なんだろう。


またこっちから行くことができるはずだ。あの少年は“たまたま入ってきた”と言っていた。ということは、彼も意図的にあそこへ入ったわけじゃない。

「十時、十分……」

ふと、そんな言葉が浮かんだ。確か自分が交差点に飛び出す直前、腕時計はその時間を指し示していた。

そしてあの少年も、別れ際にその時間を言っていた。

試してみるか。

馬鹿馬鹿しいと言えばそれまでだけど、望みをかけてみよう。夜の十時、また交差点へ向かった。十時というか、正確には二十二時。果たしてこれでも有効だろうか……。

今朝の体験自体、誰にも信じてもらえない。だから行けなかったら諦めよう。疲れがたまって、とんでもない幻覚を見ていたんだと言い聞かせる。それかいっそ宇宙人の仕業でタイムワープでもしてしまったのだと。


あれが夢だとしても、もう一度だけ夢を見たい。現実を忘れる為の、夢を。


時針を確認する。信号が青に変わる。

十時十分。八、九、……十秒。


その時間に、自分だけが十字路のど真ん中に足を踏み入れた。

「わ……っ!?」

途端に、急激な目眩に襲われる。

今朝とまったく同じだ。白い光が身体を包んでいく。と同時に膨大な量の記憶が流れ込んできた。

白のスニーカーが宙に投げ出される。

そして、突き刺すような二つの光。

交差した場所の中心、白線、男の子がうずくまって泣いている。

これは…………何だ。


「あっ」


瞬きを繰り返すと、視界はようやく開けた。

本日二度目の空虚な空間。


来た……!!

感激のあまりその場で叫びたい衝動に駆られた。けどそこはグッとこらえ、ガッツポーズだけに留める。

次いで辺りを確認しようとすると、真後ろから呆れ返った声が聞こえた。


「……ちょっとお兄さん。何でまた来てんの?」


制服を着た少年。

確かに、今朝ここで出会った彼がいた。




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