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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
油断

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55/63

#9



本が読めれば良い。友達なんてどうでもいい。なのにいつの間にか学校が楽しくて仕方なかった。それは全て秦城のおかげ。

それを自分からぶち壊した。告白して玉砕、テレビやドラマならお決まりの展開だ。終わったことは忘れて新しい恋を見つけよう、という台詞が頭に浮かぶ。むしろこれしか思いつかない。


でも忘れる方法は思いつかない。どうせなら忘れ方も詳しく教えてほしかった。


「……永月、待って!」


秦城はわざわざ追いかけてきてくれた。でも振り返るのが怖くて、止まらずに走った。

前を見ず、足元ばかり見て風を切る。


そのせいで交差点に飛び込んでしまった。

足元の白線に気付いて慌てて顔を上げると、信号は赤。聞いたこともない大音量のクラクションが耳元で鳴った。

鼓膜が破けるかと思った瞬間、衝撃を受ける。

物理的ではない、むしろ優しく包まれるように、白い光に照らされていた。

何が起きたのか分からない。

ただ次に目を開けたとき、何もない世界から交差点を見下ろしていた。

下一面が交差点の景色となっている。信号はとっくに青に変わり、たくさんの人が歩きだしていた。

目を凝らしてそこを見ていると、秦城が立ち尽くしているのが見えた。俺を追いかけてきたけど、見失って困ってる様子だった。

彼の前に行って弁解したい。秦城は何も間違ってないんだ。同じ男に告白されて驚いただけ。むしろ被害者だ。

怒っていたとしても、謝りたい。そう思って手を伸ばしたけど。


「え? ……俺?」


秦城とは正反対の位置。赤信号に変わり、人々が一斉に走った先の場所を見て、息を飲んだ。


そこにいたのは間違いなく“俺”だった。


全く同じ格好をして、周りをきょろきょろと見回している。そして何事もなかったかのように、交差点から歩いて去っていった。


有り得ない。そう笑い飛ばしたかったけど、自分が今どこにいるかもわからないから笑えなかった。

有り得ない、ことはない。

俺はよく分からない世界に飛ばされたけど、現実には“俺”の姿をした誰かがいた。

恐怖しかなかった。

帰らなきゃ。本当に自分だったのか確かめて。そして何とかして居場所を取り返さないと。

混乱する頭で息巻くものの、そのたびに秦城に言われたことを思い出した。


「気持ちわるい」。たった一言なのに、その言葉は手足を奪う。現実に帰る橋を断ち切って、ここに留まらせようとする。




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