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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
油断

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50/63

#4



十年間目を逸らし続けた代償が“これ”だ。自分の知らない場所でずっと息をしていた少年を見据える。

だがそれも今日まで。あの日の出来事も十時の待ち合わせも、今日で全部終わらせるんだ。


「どうしたの、急に黙って。具合悪いの?」


白露は不思議そうに、清心の顔の前すれすれで手を振る。いつもなら何とも思わないその仕草も、今は可笑しくて仕方ない。

不覚にも笑ってしまった清心を、白露は訝しげに睨んだ。


「……何だよ。何が可笑しいの?」

「いや、悪い。でも可笑しいだろ? 毎回、何にも覚えてないふりしてさ……。俺の焦った反応を見るのは面白かったか?」


まるで親友に語りかけるような声。その声に、清心自身も驚いていた。

喉に引っかかっていた魚の骨がとれたような爽快感に喜んでいる。彼は今初めて心の底から笑って、白露と対面していた。

ただ、対する彼は今までにない険しい顔をしている。一番手前にあるのは怒り、次に戸惑い。その奥に見え隠れしている、悲しみ。どれも純然とした彼の感情。


「ここはお前の精神世界なんだろ。だからお前しか入れないし、お前しかいない。でもお前が呼び寄せてくれたから、俺はここに入れた」


ここは白露がつくる世界。何でも消滅できるし、何でも生成することができる。

例えば、他人の記憶も消去できる。

自分にとって都合の悪い記憶は全て。白露は俺をここに呼んでは、帰る際に「自分の顔」の記憶を消していた。

恐らく知られたくなかったんだろう。十年前にフッた親友。それが自分だということを。

十年という時を置いた理由は分からない。しかし十字路に飛び込んだ俺を呼び出すことに成功した彼は、初対面のふりをして親交を図った。

実際は大声で言えないような関係を築いてしまったけど、彼の目論見どおりに運んでいたんだろう。


彼はずっとここにいたかった。

そして、俺と会いたかったんだ。

その理由は好意か、……まったく逆の、殺意か。そこまでは分からないけど。

「俺をここに呼んで何がしたかったんだ? 俺の記憶をちょっとずつ奪って、自分も記憶喪失のふりして……それで得られるモンなんて何もないだろ」

確かに、一時は愛情に近いものが生まれた。

だけど恋人とは違う。か弱い存在を守りたいと思う庇護欲に近かった。


俺は無意識に、白露は意識的に、恋人の真似事を楽しんでいたんだ。




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