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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
罪滅ぼし

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39/63

#2



カーテンの隙間から差し込む陽光に気が付いて、静かに瞼を開けた。

清心は上体を起こし、深く息をつく。隣を見ると匡が寝息を立てながら眠っていた。昨日はあのまま寝落ちしてしまったらしい。

起こさないように布団から出て、身支度を始める。昨日よりもずっとスッキリした頭で、今日の予定を確認した。顔を洗うとさらに覚醒し、意欲まで出てきたから、簡単な朝食を用意した。

「おはようございます」

「おはよう」

二人分のコーヒーを淹れた頃、匡がフラフラしながら起きてきた。具合が悪いわけじゃなく、単に寝ぼけているようだ。良い匂いがすると言って食卓を覗きに来た。

「一緒に食おう。俺は今日仕事だから」

「あ、ありがとうございます」

匡は清心が作った簡単な朝食を、嬉しそうに食べた。まるで豪華なホテルで食事してるかのように礼儀正しい。それが少し可笑しくて、清心も彼を眺めることに時間をかけてしまった。

穏やかな朝。

八時になると同時に、二人は家を出た。


「清心さん、本当にありがとうございました」

「いや全然。これからどうすんの?」

「俺は、変わらないかな……とりあえずバイト頑張ります。生活費だけは稼がないと生きてけないから」


駅へ向かう道すがら、匡の現在の様子を尋ねた。

「正社で働きなよ。職歴なくても、ウチは人手足りないからきっと雇ってくれるよ」

「はは、清心さんと一緒なら心強いですね。……でもすいません、多分まだ無理です。俺急に具合悪くなることあるから。それで欠勤が続いて、バイトも切られてきたんです。これさえ治ればちゃんと働けるんだけど」

匡のその症状は深刻だ。そこまで生活に支障をきたしてるのに病院で何も診断されないなんて、本当におかしな話だ。

「あんま気負うなよ」

目的の駅に着いたので、互いに違う改札を目指す。清心は会社に、匡は家に帰ろうとしていた。

「気をつけて」

「はい」

軽く手が触れる。行き交う人が多いからこそ、自分達に注目する者は誰一人いない。ここにいるけど、誰からも認識されてない。そういう場所。

たくさんの人が一斉に飛び込む、あの十字路と同じだ。


駅員のアナウンスが流れると同時に、彼と別れてホームに降りた。時間ちょうどに電車が来て、いつもの車両に乗り込む。

高揚も動揺もしない、平坦な一日が始まる。それが今はとても安心する。

目的の駅に到着する間だけ、清心は瞼を閉じた。




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