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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
行方知れず

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27/57

#10



「九時半……」


正しくは二十一時半。

夜に染まった空の下、華やかな光を放つ歓楽街に清心は来ていた。


昼間の件がまだ胸に引っかかっているが、今は白露のことに集中したい。努めて忘れようとした。

駅から離れた裏路地を歩く間、これからホテルへ行きそうなカップルと何組もすれ違った。自分も以前は彼らと同じ。寧ろよっぽど本能に従順で、性に奔放だった。

「ん?」

ポケットの中の振動に気付き、スマホを取り出す。着信がきてるので通話に出ると、


『もしもし! 悠、今から店に来ることできる?』


ゲイの知り合い、翔真からだった。

騒がしい音楽が通話口から聞こえてくる。どうやらバーにいるみたいだ。

「今から? 悪いね、俺今日はそんな気分じゃなくて……」

何より、今は白露に会いにいかないといけない。そう思ってやんわり誘いを断ろうとしたが、溜息まじりの低い声が聞こえてきた。


『そっか、困ったなぁ。匡君覚えてる? 前に悠がお持ち帰りした子。あの子が今日も来てるんだけど、何か具合悪そうなんだよ。だから早く帰れって言ってんだけど、……お前が来るまで帰らないって言い張ってんの』

「は……はぁ?」


匡は確かに、以前バーへ行った時に一度だけ寝た青年だ。人形のように綺麗な、整いすぎて怖いぐらいの美青年。

しかしそれより印象に残っているのは、とにかく無気力ということ。常に半分頭が寝てるような青年。それが彼。

電話番号を交換したものの、あの夜から一度も連絡を取ってない、セフレとも言い難い関係。なのに何で、そんな突拍子もないことを言ってるんだか。素直に疑問だった。

『悠ー、やっぱ来られない?』

翔真の困ったような声が鼓膜に張り付く。

交差点へ向かおうとしていた……清心の脚は、逆方向へ回る。


「……今から行く」


溜息を飲み込み、スマホを電話を切った。

断ろうと思えば断れたのに、口は心と正反対の言葉を紡いだ。

正直な話、匡の顔も忘れかけている。「綺麗だった」ことしか覚えてなくて、似てる芸能人の顔に例えることもできない。

それでも気になる。匡はきっと善人でも悪人でもない。

空っぽなんだ。ふらふら、ふわふわと漂いながら生きている。突き飛ばせば簡単に骨折してしまいそうな青年だ。


だから余計に世話を焼いてしまうのかもしれない。

重たかった脚はやがて軽やかに前へ進み、夜の道を駆け抜けた。




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