8話
文化祭まで残り二週間。図書委員会と各部の合同準備は佳境に入っていた。図書室の机には完成間近のイラストや写真が並び、廊下には模型部が作った本棚の立体模型が運び込まれていた。
「すげー!本物みたいだ!」一年生の委員が歓声を上げる。
「サイズもぴったりだね」三年生役員が頷く。
だがその直後、模型の一部がぐらりと傾いた。
「うわっ!」と声が上がり、模型部員が慌てて支える。
「接着がまだ乾いてなかったみたいだ」苦笑しながら修復に取りかかる。周囲の委員も「テープ持ってきます!」「支えます!」と走り回り、廊下は一時騒然となった。
料理部の調理室では、別のトラブルが起きていた。小説に登場する料理を再現していたが、プリンが焦げてしまったのだ。
「どうしよう、失敗しちゃった……」料理部員が肩を落とす。
「見た目は悪いけど、味は悪くないよ」と図書委員の一年生が試食して笑う。
「それなら“試行錯誤の記録”として展示すればいい」と三年生役員が提案し、写真部が「じゃあ撮影して展示に加えよう」と応じた。失敗も展示の一部に変わる瞬間だった。
写真部では、展示用の写真を印刷していたが、プリンターが紙詰まりを起こした。
「うわ、止まった!」
「落ち着いて、まず紙を取り除こう」部員同士で声を掛け合い、慎重に直していく。だが途中で紙が破れてしまい、再びざわめきが広がった。
「もう一度印刷すれば大丈夫!」と別の部員が声を上げ、皆で笑いながら作業を続けた。
図書委員会のメンバーはそれぞれの部を回り、応援や手伝いをしていた。真琴は「大丈夫、直せる!」と声を張り上げて場を盛り上げ、優は「仕上げは慎重に」と一言添える程度。主役はあくまで各部の生徒たちだった。
夕方、図書室に戻った委員たちは進捗を報告し合った。
「模型、修復完了!」
「料理、失敗も展示に活かす!」
「写真、プリンター復旧!」
小さなトラブルはあったが、委員会と各部の協力で乗り越えられた。失敗も笑い合いながら前に進む雰囲気に、図書室は熱気に包まれていた。机の上には散らかった資料や色ペンが残り、窓から差し込む夕陽がそれを照らしていた。
「文化祭って、準備からもう楽しいね」一年生がぽつりと言う。
「そうだな。みんなでやるから面白いんだ」三年生役員が頷いた。
真琴はその言葉に「絶対盛り上がる!」と笑い、優は「準備は大変だけど、みんなでやれば乗り越えられる」と静かに返した。二人の声は控えめだったが、委員会全体の熱気の中に自然に溶け込んでいた。




