3話
五月のある午後。図書委員会は「読書週間」に向けたポスターづくりを任されていた。図書室の机に模造紙や色ペンが並び、十五名の委員がそれぞれアイデアを出し合っている。
「キャッチコピーはどうする?」と三年生の役員が問いかける。
「本を読もう、じゃ普通すぎるよね」
「イラストを入れた方が目を引くんじゃない?」
一年生たちは緊張しながらも意見を出し、二年生はそれをまとめようとする。真琴は腕を組んで考え込んだ。
「うーん……派手にした方がいいよな。文字を大きくして、カラフルに!」
「でも、図書室の掲示だから落ち着いた雰囲気も必要だと思う」優が静かに返す。
「えー、地味すぎると誰も見ないって!」
「派手すぎても読みにくいよ」
二人のやりとりに、周囲の委員が笑った。
「やっぱり桜井さんと藤堂くん、意見が真逆だね」
「でも両方大事かも」
三年生の役員が「じゃあ、両方取り入れよう」とまとめた。文字は大きく、色使いは明るくしつつ、全体のレイアウトは優が整える。真琴はイラスト担当に回った。
「よし、私が描く!本を読んでる人の絵とかでいい?」
「いいね。元気な感じで」
「じゃあ、笑顔で本を持ってるキャラにするわ!」
真琴はペンを走らせ、勢いよく人物を描いていく。線は少しラフだが、表情は生き生きとしていた。優はその横で文字の配置を考え、定規でバランスを整える。
「桜井さん、絵はいいけど、もう少し余白を残した方が見やすいよ」
「なるほど、じゃあここ削るか」
二人が自然に協力し始めると、周囲の委員も加わった。
「色塗り手伝います!」と一年生が声を上げ、
「キャッチコピーは『本の世界へようこそ』でどう?」と別の二年生が提案する。
「いいじゃん、それ!」真琴が即座に賛成し、優も「読みやすいし、雰囲気も合う」と頷いた。
作業は和やかに進み、夕方にはポスターが完成した。大きな文字と明るい色彩、そして真琴の描いた笑顔のキャラクターが目を引く。全体のレイアウトは優が整えたおかげで、見やすくまとまっていた。
「おー、いい感じ!」真琴が満足そうに眺める。
「みんなのおかげだね」と優が静かに言う。
三年生の役員も「今年のポスターは例年より明るい雰囲気だ」と評価した。委員たちは達成感に包まれ、自然に笑顔が広がった。
帰り際、真琴は優に声をかけた。
「やっぱり藤堂がいると助かるわ。私、勢いだけだから」
「桜井さんがいると、場が明るくなる。どっちも必要だと思う」
その言葉に真琴は少し照れたように笑った。まだ「ただの委員仲間」だが、互いの違いを認め合う一歩を踏み出した瞬間だった。




