1話
新学期最初の週。放課後の図書室は、まだ春の光が差し込んでいて、窓際の机に並ぶ本の背表紙が柔らかく照らされていた。図書委員会の初仕事の日だ。各学年から集まった十五名の委員が顔をそろえ、担当の先生が簡単な説明を終えると、いよいよ作業が始まった。
「じゃあ今日は、返却された本の整理と、棚の点検をお願いします」
三年生の役員が中心となり、作業の割り振りを決めていく。
「二年生は返却本の整理をお願い。桜井さんと藤堂くんは、この棚の点検ね」
自然に名前が呼ばれ、真琴は「はい!」と元気に返事をし、優は静かに頷いた。二人は並んで棚の前に立ち、返却された本を手に取る。
「番号はわかるけど、棚の場所がまだ覚えきれないな」
「文学はこっち、理科はあっち。慣れればすぐだよ」
優が淡々と説明すると、真琴は「なるほどね」と言いながら本を戻す。だが、少し斜めに差し込んでしまい、隣で作業していた一年生が笑いながら指摘した。
「桜井先輩、背表紙がずれてますよ」
「おっと、ありがと!」
真琴が直すと、周囲も自然に笑いが広がった。
作業が進むにつれて、委員たちの間に会話が生まれる。三年生の役員は「文化祭では展示企画をやるから、今年は工夫したいね」と話し、一年生は「まだ慣れなくて緊張します」と答える。真琴は「大丈夫大丈夫!」と励まし、優は「わからないことがあれば聞いてね」と落ち着いた声でフォローした。
その様子を見ていた三年生の役員が、ふと二人に声をかけた。
「桜井さんと藤堂くん、タイプが違うけど、いい雰囲気だね」
「え、そんなことないですよ!」と真琴が慌てて否定する。優も「まだ今日が初めてですし」と控えめに答えた。だが、周囲の委員たちは「でも面白い」「なんか安心する」と口々に言った。
作業が終わる頃には、図書室の棚はきれいに整い、返却本もすべて所定の場所に戻っていた。先生が「よく頑張ったね」と声をかけると、真琴は「やったー!」と両手を上げ、優は静かに「ありがとうございます」と答えた。
帰り際、真琴は優に声をかけた。
「ねえ、藤堂。部活は何入ってるの?」
「セパタクロー同好会。知ってる?」
「え、あの足でボール蹴るやつ?すげー!私バスケ部だから、体育館で会うかもな」
「そうだね。練習場所は体育館の隅だから」
「じゃあ、図書委員と部活、両方で顔合わせるってことか。なんか不思議だな」
真琴は笑いながらそう言い、優も「そうだね」と穏やかに返した。




