18話
期末試験が終わり、冬休みを目前にした図書室は、久しぶりに穏やかな空気に包まれていた。机の上には参考書ではなく、読みかけの小説や雑誌が並び、生徒たちの表情も柔らかい。試験前の張り詰めた緊張が解け、静かな余韻が漂っていた。
「ねぇ、やっと本を読む時間ができたね」
真琴がページをめくりながら笑うと、隣の友人も「試験の後だから余計に落ち着くね」と頷いた。
優は窓際の席で静かに本を開いていた。セパタクロー同好会の練習も一段落し、久しぶりに読書に集中できる時間を楽しんでいた。ページをめくる手は落ち着いていて、試験前の緊張とはまるで別人のようだった。
図書委員会のメンバーは、試験中に「自習室化」していた図書室を再び「読書の場」に戻すため、展示や掲示を整えていた。新刊紹介のコーナーを目立つ場所に移し、冬休みにおすすめの本を並べる。机の隅には「冬休み読書チャレンジ」と題したカードが置かれ、生徒たちが自由に参加できるようになっていた。
顧問の先生が図書室に顔を出し、柔らかい声で言った。
「試験の間は勉強の場としてよく機能していたね。でも、図書室はやっぱり本の居場所でもある。冬休みは、少しだけでも本を開いてみてほしい」
その言葉に、生徒たちは自然に頷き、机の上の本に手を伸ばした。
夕方になると、窓から差し込む光が赤く染まり、図書室は一日の終わりを告げていた。真琴は「冬休みは、部活も読書も両方楽しみたいな」と笑い、優は「静かな時間を大事にしたい」と静かに返した。二人の言葉は対照的だったが、どちらも図書室の空気に自然に溶け込んでいた。
委員の一人が片付けをしながら呟いた。
「試験の時は自習室みたいだったけど、こうして本を読む人が戻ってくると安心するね」
その言葉に、周囲が静かに頷いた。
――こうして、冬休み前の図書室は再び「読書の場」としての姿を取り戻し、生徒たちの心を温めていた。試験の緊張を乗り越えた余韻と、新しい季節への期待が、静かなページの音に重なっていた。




