15話
期末試験を一週間後に控えた放課後、図書室はいつも以上に人で賑わっていた。机には参考書やノートが広がり、鉛筆の音が絶え間なく響いている。文化祭や読書週間の熱気が落ち着いた今、学校全体が「勉強モード」に切り替わっていた。
図書委員会のメンバーは机の配置を工夫して自習スペースを広げていた。静けさを保ちながらも、互いに声を掛け合う姿が見える。
「ここ、もう少し机を詰めようか」
「うん、二人並んで座れるようにしよう」
その時、委員の一人がぽつりと呟いた。
「最近は勉強ばかりで、本を読む人が減ったね……」
図書室が「自習室」になってしまっている現実を意識した瞬間だった。
顧問の先生が図書室に入ってきて、生徒たちの様子を静かに見守った。
「試験前にここで勉強するのは大切だね。でも、図書室は本と出会う場所でもある。委員のみんな、勉強する人を支えつつ、読書の場を守る工夫も忘れないで」
先生の言葉に、委員たちは頷きながらも少し複雑な表情を浮かべた。机の隅に新刊紹介の掲示やおすすめ本のコーナーを残しておく工夫が、彼らの答えだった。
その頃、練習を終えた真琴が図書室に入ってきた。汗を拭きながら机に座り、参考書を開いたものの、すぐに眉をひそめる。
「うわ、公式が全然頭に入らない……」
隣に座っていた同級生が笑いながら「試合の作戦みたいに覚えればいいんじゃない?」と声をかける。真琴は「なるほど!」とペンを握り直した。
セパタクロー同好会の優は、静かにノートを広げていた。少人数の同好会で練習を続ける彼は、集中力を保つ術を知っていた。ページをめくる手は落ち着いていて、周囲の騒がしさに動じない。
「藤堂、どうやってそんなに集中できるんだ?」と近くの生徒が尋ねる。
「練習と同じだよ。繰り返して、体に染み込ませるだけ」優は淡々と答えた。
その頃、各部の顧問も図書室に顔を出していた。
美術部顧問は「勉強の合間に絵を描くのも息抜きになるよ」と励まし、料理部顧問は「甘いものを食べて頭を休めるのも大事だ」と微笑んだ。写真部顧問は「勉強している姿も記録に残すと面白いかもね」と冗談めかして言い、国語科の先生は「読書も集中力を鍛えるから、試験勉強と両立してほしい」と声をかけた。
バスケ部顧問は真琴に「練習も大事だが、試験を乗り越えないと次の大会に集中できないぞ」と励まし、真琴は「はい!」と大きな声で返事をし、周囲から笑いが起こった。
セパタクロー同好会の顧問も「人数が少なくても続けることに意味がある。勉強も同じだ。小さな積み重ねが力になる」と言い、優は静かに頷いた。
夕方、窓から差し込む光が赤く染まり、図書室は一日の終わりを告げていた。机の上には散らかったノートや参考書が残り、生徒たちは疲れた顔をしながらも笑顔を浮かべていた。
「試験前って大変だけど、みんなでやると少し楽しいね」一年生がぽつりと呟く。
「そうだな。努力は一人でもできるけど、支え合うと続けやすい」優が静かに返した。
真琴は「絶対点数上げてやる!」と拳を握り、周囲の笑いを誘った。図書室は勉強の場でありながら、委員会の工夫によって「読書の場」としての空気も守られていた。机の隅には新刊紹介やおすすめ本のコーナーが残され、勉強の合間に本を手に取る生徒もいた。
――こうして、期末試験前の図書室は学校全体の努力の象徴となり、先生や顧問の励ましが生徒たちの背中を押していた。同時に「自習を尊重しつつ、図書室でもあり続ける努力」が委員会の新しい課題となっていた。




