10話
文化祭当日。朝から校舎は人の波で賑わっていた。昇降口には色とりどりのポスターが貼られ、廊下には呼び込みの声が響く。図書委員会の展示も、いよいよ本番を迎えていた。
入口には写真部が撮影した「文学作品の名場面写真」が並び、来場者は足を止めて見入った。
「これ、うちの生徒がモデルなんだって!」
「すごい、本当に物語の世界みたい」
観客の声に、写真部員は照れ笑いを浮かべていた。
廊下に進むと、模型部が作った本棚の立体模型が目を引いた。木材の匂いが漂い、まるで図書室が飛び出してきたようだ。子ども連れの来場者が「すごいね!」と声を上げ、写真を撮っていた。委員会の一年生は「触らないでくださいね」と慌てながらも笑顔で案内していた。
図書室内には、美術部が仕上げた鮮やかなイラストが掲示されていた。背景まで描き込まれた場面は迫力があり、来場者は「これ、ポスターにしてほしい!」と口々に言った。真琴はその声を聞きながら「やった!」と小さくガッツポーズをしたが、すぐに他の委員に紛れて動き回った。
最後のコーナーは料理部の試食。小説に登場する料理を再現したプリンやスープが並び、甘い匂いが漂っていた。来場者は列を作り、試食を楽しんでいた。
「物語の味ってこういうことか!」
「失敗例も展示してあるのが面白いね」
料理部員は誇らしげに笑い、委員会のメンバーも「ぜひ感想を書いてください」とアンケート用紙を配っていた。
展示全体は一方通行の導線で整えられており、混雑もなくスムーズに流れていた。優が事前に図面を引いていたおかげだ。三年生役員は「導線完璧だな」と満足そうに頷いた。
午後になると来場者はさらに増え、図書室は熱気に包まれた。委員たちは交代で案内を続け、声を張り上げて来場者を迎えた。真琴は「こっちですよ!」と元気に呼び込みをし、優は「出口はこちらです」と落ち着いた声で誘導した。二人の違いは自然に役割へと変わり、展示を支えていた。
夕方、文化祭の終了時間が近づくと、来場者が次第に減り始めた。図書室に残った委員たちは、疲れた顔をしながらも笑顔を浮かべていた。
「すごい人だったね」一年生が息をつき、
「でも楽しかった!」と二年生が笑った。
三年生役員は「今年の展示は例年より盛り上がった。みんなのおかげだ」と言った。委員たちは自然に拍手をし、達成感に包まれた。
片付けの合間、真琴は優に声をかけた。
「藤堂、導線のおかげで混雑しなかったな。やっぱり計画って大事だな」
「桜井さんの呼び込みがなかったら、人は集まらなかった。両方必要だったと思う」
二人は短く笑い合った。互いを褒め合うのではなく、自然に役割を認め合うやりとりだった。
――こうして、図書委員会の文化祭展示は成功を収めた。学校全体の熱気の中で、委員会と他部の絆は強まり、真琴と優の距離も少しずつ縮まっていった。




