表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《Match Point Me》/マッチポイント・ミー  作者: 世志軒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/38

葛藤⑩

 選挙後の帰りのホームルーム、選挙の投票が終わり、その結果が発表される時間がやってきた。


 校内放送が響く。

 「これより、生徒会執行部選挙の結果を発表します」


 教室内にざわめきが走った。

 伊吹陽太は窓際の席で腕を組み、淡々と聞くふりをしていた。


 (……別に、落ちてもいい。落ちたら楽になれる。けど――)


 胸の奥は静かじゃなかった。

 不安と期待がないまぜになった感覚が、鼓動を速める。


 前の席から身を乗り出す声がする。

 「誰が受かったかな」

 「やっぱ二年の先輩たちじゃない?」


 その中で、隣の席の三谷莉緒は余裕の笑みを浮かべていた。

 「ま、うちは受かるでしょ」

 「……根拠は?」

 「ノリと勢い」


 あっけらかんとした返事に、伊吹は思わず苦笑する。

 (……そういう自信、どこから来るんだよ)


 放送は淡々と読み上げを続けていく。

 「まず、会長――二年、藤堂翼」

 拍手が教室に広がる。

 「同じく、副会長――二年、村瀬紗英」

 また拍手。順当に、上級生の名前が呼ばれていく。


 そして――


 「副会長――一年、三谷莉緒」


 「きた!」と莉緒が拳を握る。

 クラス中から「おー!」「さすが!」と歓声が上がった。

 彼女は照れ隠しに「まぁ当然でしょ」と笑い、肩をすくめてみせる。


 その直後だった。


 「同じく書記――一年、伊吹陽太」


 伊吹の名前が響いた瞬間、教室が一気にざわめいた。

 「やっぱり伊吹か!」

 「そりゃそうだろ、新入生代表だし」


 あちこちから驚きと納得の声が飛び交う。

 注目の視線が一斉に突き刺さる中、伊吹は机の上で手を握りしめた。


 (……まただ。結局、こうやって前に立たされる)


 嬉しさはない。むしろ肩に新しい重みがのしかかる感覚だった。

 逃げ場にしたいだけだったはずの生徒会が、また「期待」の舞台に変わってしまった。


 けれど、その重さの奥に、小さな灯があるのも確かだった。

 ――挑戦してみたい。

 まだ曖昧で、揺れる思いにすぎない。

 だが、その火を消したくない自分が確かにいた。


 「以上で、生徒会執行部選挙の結果発表を終わります」


 放送が終わると同時に、教室は拍手と歓声に包まれた。

 莉緒は机に身を乗り出して、にやりと笑う。

 「ほらね。アンタも仲間入り」

 「……気楽に言うなよ」

 「気楽にやんなきゃ、やってらんないでしょ?」


 その言葉に、伊吹は返す言葉を失った。

 窓の外の青空を見上げながら、胸の奥に広がる熱を、ただ静かに感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ