【閑話】 不審な噂
ーーー町の出入り口には、多くの人々による長い行列が出来きていた。
「お願いです……!せめて子どもだけでも…!」
「移住は受け入れてないんです。本当に……申し訳ありません」
「宿は!?宿はどこも空いてないのか!?」
「どこも満室です……いつ空くのかも分かりません……」
「それじゃ…俺たちはどこへ行けば……」
門番たちは交代すら出来ず、全員で対応に追われていた。
とにかく人が足りない。
人の波が絶え間なく続いている。
「隣町への辻馬車なら3時間後に一便ありますが…」
全員乗れるわけが無い。
落胆の声が列のあちこちから上がっていた。
少し前から、隣国コソクダィルの悪い噂が流れて来ていた。
違法薬物、奴隷取引、暴走する王族、国の腐敗の噂だ……
「おい、聞いたか?あの国もう、神殿からも破門されたって噂、本当なのか?」
「第三王子が浮気相手に聖女を名乗らせていたんだろ?神殿の許可も無しで」
「まさにクソだな。コソクダィルは……」
ただの噂にしては生々しすぎる。
実際に各国が調査をした結果、数々の悪行が露見し、コソクダィルは国際的に孤立していた。
その余波が、民の暮らしに襲い掛かる。
「魔物が増えてきているのに、兵士の補充も助けもねぇ…。
もうあの国にはいられねぇんだよ」
「母さん…寒いよ…」
「大丈夫、もうすぐだからね、もうすぐよ…」
民は次々と国を捨て、逃げるように各地へ散って行った。
そして、地理的に隣国に近いサイーショの町にも、多くの民が押し寄せた。
中には商人や冒険者もいたが、多くは普通の市民だった。
「移住申請か……」
「もうこの町は受け入れ不可なんだ。これ以上、人が増えたら元々の住民の食糧すら足りなくなる。」
「でも、帰れないんです…!あの国にはもう……」
「……すまないな。他の都市を当たってくれ……」
町の役人も疲弊していた。
助けたいのだ。だが拒絶しなければ町が持たないのだ。
それはサイーショの町だけではなく、他の町、他の国でも同様だった。
「職も住まいも無い人間が増えれば、治安が悪くなる。
病も流行るだろう。……これ以上は無理だ」
追われる民、拒む町。
その間でサイーショの町は苦悩していた。