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チビ  作者: チビ
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  第一話 天の羽衣


じじいが言うとった、わしが村に降ってきよった日は、

冬にしては優しい雨が降っとったそうや。

そんな雨の日に、滋賀県と三重県の県境にある政所という小さな村に

わしは降ってきよった。

そんなわしを見つけてくださったがは、

わしが今では兄さまと言うとるお方や。


兄さまに、その日のことを聞くといつも絵物語の様に話し出される。

「あの日の夕暮れに琵琶湖の上で見た七色の様な空の色が、

 風にゆらめきながら刻一刻と濃き紅色に移り変わっていく様に、

 私は本物の天の羽衣を間近で見た様に思いました。

 その羽衣に導かれて、私はあなたに出会うことが

 出来たのでしょう」

そう語りかけるのは瀬川菊之丞と名乗る女形の歌舞伎役者で、

語りかけている相手が、この物語の主人公で通称チビと

といわれる女の子である。

兄さまのそばにいると、いつも白檀の香のええ匂いがした、

その香りの包まれると、ふわりと優しい温もりに包まれる様で

兄さまがいう…天の羽衣に導かれてきたというのも

あながち嘘ではない様な気もしていた。


1973年1月16日のその日、

普段は街(東京)に住まいされていた兄さまは次の舞台(羽衣)の

成功祈願の為に日本三大弁財天が祀られている。

滋賀県の竹生島神社にわざわざ舞台衣装に使う布を携えて

成功祈願に訪れていた。

その時兄さまは28歳、白くしなやかな身体に涼やかな目元、

スッと通った鼻筋に上品な口元、

柔らかでありながらも澄んでよく通る声は人気女形に相応しい容姿容貌であるが…それまでの女形に比べてすらりと伸びた背の高さは時に周りから批判を集めることもあった。

しかし、そうした批判をバネに自らの芸を励む糧としてきた芯の強さを持ち合わせる人でもあった。


そんな兄さまが竹生島神社での奉納祈願を終えた後、

思いがけず暗い迷い道に迷い込むことになる。




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