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須々木優大49.メタモルフォーゼ

 瀬戸さんがこの世界に消え入るまで、僕も母さんも、リリラガンも何も口にはしなかった。


「……そうだ。知り合いに、ここへ向かうよう一報を入れていたんだった。早く連絡して遠ざけないと」


 母さんがそうポツリと呟いたその時、


「ここに向かってた樹木野郎の事か? 来る途中に会ったから切り刻んで殺してやったよ。息巻いてたくせに、ただの雑魚だったんだ。しょうもねぇだろ?」


リリラガンは大げさに体を動かしながら、静寂をかき消すかのようにそう嘲笑ってみせた。


「……そっか」


 俯きながら、苦しそうにそう声を漏らした後、母さんはゆっくりと視線を僕へと移動させた。


「優大。ごめんね」


「母さんから父さん。父さんから僕へ。二人の思いが詰まったバトンは、確かに僕の手の中にある。

 聞いてくれ。誰がなんと言おうとも、僕は二人の息子になれてよかった。二人の背中を見て育つことができたから、幸せになれたんだよ」


 弱弱しい表情で僕を見つめながら言葉を吐いた母さんを見ていたら、自然と言葉が漏れ出ていた。


「ありがとう」


 母さんは僅かに笑みを浮かべると、僕を力強く抱きしめて噛み締めるようにそう言った。そして、


「皆が私を支えてくれた。進が命をつないでくれた。瀬戸さんが背中を押してくれた。このまま沈んでる場合じゃない。私も役目を果たさなきゃね」


はっきりとした声でそう口にした。


「どういうこと?」


「本音を言えば、私自らの手で成し遂げたかったけれど、思いを貫き通さんとする強き意思に寄り添えられるのは、その意思を向けられた人間だけだから」


「……母さん?」


「大丈夫。私もちゃんと幸せになれた。いい人生だった。私を母親にしてくれて、最後まで母親のままでいさせてくれてありがとう。優大、愛してるよ」


 母さんは勢いよく僕のそばを離れると、満面の笑みを浮かべた。


「メタモルフォーゼ!!」


 そして、右手を天に突き上げるとそう声を張り上げた。気づくと頬を濡らしていた母さんだったが、光が包み込む直前まで表情を崩す事はなかった。


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