須々木優大39.口にしたくないと思うのは
付き合いが長く、親友のような存在である雪村舞さん。力仕事がある際は、率先して行動してくれるらしい瀬戸剛さん。最年少である雪ちゃんと、ゆうとくん。その他にも、母さんは様々な人たちを紹介してくれた。
中には、僕の存在を母さんから聞いていた人もいて、母さんが紹介すると自分の事のように涙を流してくれる人もいた。
そこら中が笑顔で溢れていて、戦争が行われているなんて嘘であるかのように至る所に幸せが満ちていた。
温かい。居心地がいいなぁ。
きっと母さんは、こんな世界を望んでいたのだろう。だから、すべての人のために際限なく頑張れるのだろう。
……やっぱり、僕には果たせないや。
母さんの年齢は亡くなった時点で止まっている。だから、今の僕と年齢は大差ないし、身長は僕の方が断然高い。それでも、母さんの背中はとても大きく、広く。誇らしく見えた。
「疲れたよね。休憩しようか」
そう言って、母さんは住んでいる家に案内してくれた。他の建築物と違い、年季が入っているように見える。中に入ると、椅子に座るよう指示された。
もう、親にエピソードを自ら話したいと思えるような年齢ではない。傍から見れば、今までの僕の言動はマザコンだとか、親離れできていない幼稚な奴とか思われても仕方がないだろう。それでも僕は、母さんといる今この時間を後悔のないように過ごしたいと強く思っていた。
「母さん、聞いてほしい。僕が歩んだ道のりを」
「もちろんだよ。聞かせて?」
僕の正面に座った母さんは、そう言うと小さく微笑んだ。
母さんは僕の話を相槌を打ちながら聞いてくれていたが、今までの出来事を一通り話し終えた後、静かに口を開いた。
「どんな困難も一人で請け負い溜め込んで、一人で突っ走って独りで傷つこうとして。そんなところは、あの人そっくりだね」
母さんは、無理に笑顔を作ろうとしてくれていたが、しかめた眉がそれを許そうとはしていなかった。
「私は薬の事とかよくわからなかったから、あの人には何もしてあげられなかった。そして、優大。あんたにも何もしてあげられなかった。自分なりに考えてとった行動で、二人を悲しませて、二人の人生をさらにめちゃくちゃにしてしまったんだね。私は、母親失格だ」
「そんなこと——」
「償わせてほしい。今の私なら、それができると思っている。リリラガンの一件については、強い能力を用いて前線で戦っている知り合いがいるんだ。一報を入れておくから、その人に任せればいい。だから優大。もう、頑張らなくてもいいんだ。ここで一緒に暮らそう」
母さんは、僕の両手を掴むと力強い声でそう言った。
償う必要なんてないよ。そう言ってしまうのは簡単だ。だけど、その言葉はあまりに冷酷で、身勝手で。たとえ本心であったとしても、口にしたくないと思うのは、そう思うに至った過程を、感情たちを無に帰してしまうと思ったから。
母さんが僕に対してそう言わなかったのも、もしかしたら同じ理由なのかもしれない。どのみち、僕の進むべき道は決まっている。
僕は母さんの目を一点に見つめると、口を開いた。




