雨海敦子38.お願いしたいこと
しばらくして、金髪の男が合流してこれからの事を話し合っていく事となった。
「今まで他チームへの移動手段は、黒崎さんの能力によって効率よく行われていたのですが、今後は私たち自身の足で移動していくようになるでしょう。他のチームのもとへ、私たちが責任をもって送り届けるので安心してください」
「狭間世界は広いから、他のチームを見つけるだけでも一苦労。多分かなり時間かかるだろうけど、何かあった際は私が優大との橋渡しになるよ」
金髪の男とセミロングの女がそう話しかけてきたが、私は小さく頷くだけでどこか他人事だった。そんななんとも言えない空気を一蹴させたのが、ツーブロックの男の言葉だった。
「てかさ、ずっと気になってたんだけど、なんであんたの毛先ずっと揺れてんの? ここバリアの中だから無風だよな?」
「雨海さん!! 私に背を向けてください!! 早く!!」
「え? あ、うん」
血相を変えた金髪の男の言う通りに背を向けると、数秒の沈黙の後に金髪の男が口を開いた。
「雨海さんの背後に微風がまとわりついていました。おそらく、リリラガンの能力によるものでしょう。私の能力で風の動きを止め、払いはしましたが、私たちの居場所は今まで奴に筒抜けだった可能性が高いです。つまり、奴が私たちのもとへ来るのは時間の問題。今から他チームのもとへ行く時間など、残ってはいないでしょう」
「つーことは、やるしかないって感じだな」
ツーブロックの男は、にやつきながらそう言った。
「だめだ!! あいつには勝てない!! 私に風がまとわりついていたのなら、私が皆と距離を取り囮になればいい。能力発動に限界はあれど、私は優大さんが死なない限りは不死身だから、死んだと装えば何とかなるはず。それで解決するはずでしょ?」
私は三人に向けて、必死に言葉をぶつけた。これ以上、誰かの死は見たくなかったから。
「……ミラー」
セミロングの女はそう言うと、金髪の男を見据えた。
「……雨海さん、どうやらその作戦は意味を成さないようです」
「どういうこと?」
「リリラガンが私の能力の範囲内に入った。つまり、もうすぐそこまで来てる」
私がたずねると、セミロングの女は俯きながらそう言った。
「由美さんはそのまま奴の心に意識を全集中させてください。一哉さんは優大さんを呼んできていただけますか?」
「いいのかよ。二人が顔合わせることになっちまうが?」
「大丈夫です。作戦がありますから」
金髪の男は、そう言うとほほ笑んだ。
ツーブロックの男が家の方に駆けていくのを見送った後、セミロングの女に背中を向けながら金髪の男は手招きをしてきた。何も言わずに近づくと
「お願いしたいことがございます」
小さな声でそう言った。




