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須々木優大28.小さなため息

「能力発動の上限は後悔の大きさによって左右されるの。そして、その大きさに比例して強力にもなるし、貧弱にもなる」


「つまり、もし後悔を果たすことができれば能力は使えなくなるということ?」


「その通り。後悔を果たしたとされる基準は、明確ではないのが現状で自己判断でどうこうなる問題ではないみたいだけど、仮に使える能力の分母が減った場合、値が戻る事はない。だから、あえて後悔を果たさずにいる人もいる。それくらい、この世界では能力が重要なんだ」


「能力が使えなくなったらどうなるの?」


「戦争が始まる前は、神様のもとへ行くことで天国か地獄に振り分けられるようになっていたらしいんだけど、今はどちらの空間も機能していないから、狭間に留まることしかできな……、ていうか優大。手、止まってるんですけど」


 ソファにうつ伏せになっている崎野さんは、少々浮ついた声でそう言った。


「あぁ、つい」


 そうは言っても、どこもぷにぷにしていて全く凝っている様子がない。崎野さんが満足するのを待つしかないだろう。そうこうしていると、ミラーが家の中に入ってきた。


「遅かったね。敵でもいたの?」


 ミラーは僕たちの様子を見て数秒固まっていたが、崎野さんのその言葉で息を吹き返したかのように首を横に振って、古びた丸椅子へと静かに腰かけた。


「……何かあったの?」


 崎野さんは、勢いよく飛び起きるとミラーのもとへと駆け寄った。外で話した時と雰囲気が違うと僕ですら感じたのだから、崎野さんには相当の違和感があったのだろう。


「ただ、嬉しかっただけです」


 ミラーは崎野さんを前にして微笑むと、そう言った。


「どういうこと?」


「まぁ、いいじゃありませんか。皆さん相当疲れが溜まっているはずですから、今は休むとしましょう。あっ、そうです。起きたら優大さんの歓迎パーティーをやりましょうか。幸いこの家はとても優秀でして、様々な物を出すことができますから。では、私も少し休みますね」


 崎野さんの問いかけを華麗にスルーすると、丸眼鏡を外してテーブルの上に置きそのまま腕を枕にしてテーブルに顔を伏せた。


 崎野さんは何か言いたげだったが、小さく深呼吸をした後で僕の方を見た。


「ソファは私が使うから、優大は一哉と一緒のベッドで休んで」


「……わかった」


 シングルベッドなので、スペースは限られているが他の場所よりは格段にましだろう。僕は壁側を向いて蹲っている一哉に注意を払いながら横になった。横になってからしばらくして、どこからともなく寝息とは違う小さなため息が聞こえてきた気がしたが、僕はそのまま睡魔に意識を預けることにした。

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