須々木優大23.よろしく
ひと段落がつき、ふたり揃って家の中に入ると、一斉に一哉と崎野さんがこちらに振り向いてきた。
「覚悟、決めたんだな。これからよろしく」
一哉はそう言うと、拳を突き出し口角を挙げた。崎野さんは、顔をしかめた状態で僕のもとへ近づくと、僕の両肩に手を乗せ俯いた。
「あんたはミラーに選ばれたせいで、たくさん辛い思いをしてきた。その事実は何をどう思っても変わらない。でも、でもね、エゴなのかもしれないけどね、ミラーはずっと苦しんでいた。あんたを選んでから今までずっと、ミラーだけは現世のあんたの身を案じていた。本当に、本当なんだ。
許してなんて言わない。ただ一つ、知っていてほしい。どうか、ミラーの思いを……」
崎野さんは今にも泣きだしそうな声でそこまで言うと、僕を静かに解放した。
心配や苦しみなんて、言葉で言うのは簡単だ。きっと僕が戦争を拒んだ時の泣き落としに使う材料にでもなるから、しょうがなく他者に言いふらしていただけなのだろう。
「そんなわけない!!! ミラーは一度も口にはしてないんだから。取り消してよ!!」
崎野さんは鋭い眼光を向けると、声を張り上げた。
「由美さんは他者の心を読んだり、自身の思いを伝えたりする事ができる能力です。お恥ずかしい。いつの間にか、心を読まれていたようですね」
ミラーは苦笑すると、左手で首筋を撫でた。
今のも、『それは無理』と先程話しかけてきたのも、僕の心を読んだうえでの返答だったというわけか。
「……では、正式に仲間になるという事で、自己紹介をお願いしてもよろしいですか?」
決して良くない雰囲気の中、ミラーは僕に左手で合図を送ってきた。
「須々木優大。能力は最も大切な夢を叶えるまでは死んでも生き返るというもの。戦争に参加はするけど、僕は対価を得るため。三人とは目的が違うけど、これからよろしく」
そう言い軽く会釈をすると
「なぁ優大。さっそく戦闘しに行こうぜ」
一哉が空気を読んでくれたのか、手を引くと外へと促してくれた。
「本当はミラーと由美も一緒だと、サクサク倒せるんだけどなぁ」
一哉は大きく伸びをしながら、大きな声でそう言った。
「そんな簡単に倒せるものなのか。敵は強いんじゃないのか?」
「強いよ。油断してたら簡単に死ぬな。だから今後のためにも、連携プレーには早く慣れていた方がいいと思うんだけどなぁ」
一哉は再び大きな声でそう言った。おそらく、家の中にいる二人に対して間接的に伝えているのだろう。
「いちいちきもいんだよ!!」
聞こえていたのか、家の中から崎野さんの怒号が聞こえてきた。その数秒後、扉が勢いよく開き、鬼の形相の崎野さんが顔を出した。そのままの足で僕の目の前に来ると
「言い負かしてやりたい気持ちは存分にある。今私はあんたをぶん殴りたくてしょうがない。だけど、それはお門違い。だってそうでしょ? 私は部外者なんだから。
どうしてもミラーの事を受け付けようとしないのなら、これから私がミラーの良いところをたくさん教えてあげる。どうせ長い付き合いになるんだから、たっぷり仕込んでむしろ好きにさせてやるんだからな!!」
一方的にそう言葉をぶつけると、一哉のもとへと歩いていった。
「行くよ、きも一哉」
「はいはい、仰せのままに」
一哉は頭の後ろに両手を組むと、崎野さんと並んでバリアの方へと歩き出した。
「随分と慕われているんだな」
家から出てきたミラーにそう伝えると
「私は恵まれている。心の底からそう思います」
心の籠った言葉が返ってきた。
「そりゃよかったな」
吐き捨てるようにそう言うと、僕も二人の後を追うように、ゆっくりと足を前へ運んだ。




