須々木優大19.再会
刑務所に入り、七年が経過した。僕は終身刑なのだから、どれだけ経とうがなんの意味もないのだが。
労働が終わり、自由時間となったので看守に声をかけると、すぐさま牢屋に戻った。冷たい床に横になってじっとしていると、
「面会だ」
唐突にやってきた看守にそう言われ、解錠された。
面会?
身に覚えがない。僕は手錠を付けられると、看守の後をついていった。
指示された通りの部屋に入ると、アクリル板によって仕切られた反対側の部屋に雨海敦子がいた。今では知らない人はいないと断言できる程の人気女優である。僕は平然を装い、椅子に着席した。
「久しぶり。手短に話したいと思います」
雨海敦子は、僕を一点に見つめたまま話し出した。
「須々木さんが捕まってから今日まで、私なりに人生を楽しんでみました。人生もなかなか捨てたものではないと思いました。特に楽しかったのは、船に乗って世界一周した時の事——」
「結論から言ってくれ。何が言いたい?」
「そうだった。手短に話すって言ったくせにね。失礼しました」
長くなりそうだった話題を遮った僕に対して、雨海敦子は苦笑しながらそう言うと大きく深呼吸をして再び口を開いた。
「須々木さんの夢はなんですか?」
「そんな事を聞くためにここまで来たのか?」
「そんな事を聞くためにここまで来ました。だから嘘はつかないでください」
「……ない」
叶えられなかった夢に縋るほど僕はたくましくないし、決して叶わない夢を口にして、これ以上感情に翻弄されたくもないから。
「じゃぁ質問を変えます。須々木さんは今、何がしたいですか?」
「死にたい」
「……そうですか。気持ち、変わりそうにないですか」
「あぁ」
「世界には楽しい事がいっぱいあった。それを私が——」
「そんな事は知っている。それでも僕は死にたいんだ。これが今の僕のすべてだ。今じゃ君は大女優。死んでいないという事は、幸福を得ているという事。それで充分じゃないか。今すぐ消えてくれ。二度と僕の前に現れないでくれ。話は以上だ」
一方的に話を断ち切ると、僕は席を立った。
「……わかりました」
そう言い雨海敦子も立ち上がると、唐突に右腕を振り下げた。すると袖からナイフが現れ、そのまま手に取ると傍にいた監視員一人を刺した。
すぐに別の監視員が抑え込み、その場は鎮静された。
目の前の光景に目を疑った。しかし、どれだけ疑おうが代え難い事実であった。
「何やってんだよ!! ふざけんなよ!!!!」
看守に押さえつけられながらも大声を張り上げたが、雨海敦子は口を開こうとはせずに、そのまま連行されていった。
幸い監視員の命に別状はなかったが、雨海敦子は収監された。懲役は五年であった。




