須々木優大17.日常の変則
夢、やりたい事が決まった。そう言ったあの日から、雨海さんは一人で外出する事が多くなった。どこに行くのか毎回確認してみるのだが、なぜか答えてはくれなかった。代わりに、『やりたい事をしてくるね』と笑顔を添えながら言ってくるのだ。
気づけば二月上旬。近いうちにわかると言っていた内容は未だにわからないままだが、順調であるのならばそれでいい。
今日も午後から一人で外出するようなので、昼ご飯は僕が作る事になった。
「焼きそばでもいい?」
そう確認すると
「いいね。それがいい」
雨海さんは、僕を見て小さく笑った。
作っている最中、雨海さんは洗濯物を畳んでくれていた。何やら一枚一枚確認しながら、いつもより時間をかけて丁寧に畳んでくれている。
「こらっ。焦げちゃうよ」
凝視しすぎたのか、雨海さんに気付かれ注意されてしまった。急いで視線をフライパンに戻す。
料理が完成し、それぞれの分をよそうと一声かけて椅子に座った。
「いただきます」
両手を揃え、声を合わせてそう言うとお互い食べ始めた。いつもと何も変わらない味。不味くはないが、特段美味しくもない。
「おいしい」
雨海さんは、そう言って笑顔を見せてくれた。その後は特に会話もなく、平らげると食器を洗った。あんなに苦戦していたのに、随分と手慣れたものだ。
雨海さんは、外出する準備を始めていた。雨海さんも同様、あんなに苦戦していたメイクは今ではお手の物。あっという間に支度を完了させた。すぐに玄関に向かうのかと思いきや、何やら辺りをきょろきょろ見回している。
「忘れ物?」
そう尋ねると、
「ううん。私は須々木さんみたいに、できた人間じゃないから」
よくわからない返答がきた。
「どういう事?」
「何でもないよ」
そう言うと、玄関の方まで歩いて行った。
何が言いたいのだろう。ひとまず僕も後をついていった。
「行ってきます」
雨海さんは靴を履き、振り返るとそう言って口角を上げた。
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
僕はそう言うと、キスをしようと近づいた。午後からどちらかに予定がある場合は、不足の事態に備えて事前にキスをするようにしているのだ。
「急いでるから」
しかし雨海さんは、そう言い再び口角を上げると、家を出ていった。
急いでいるようには見えなかったが、キスをしていかなかったという事はすぐに戻ってくるのだろう。だからきっと、何も気にする必要はない。
僕はリビングに戻ると、ソファに座りリモコンを握りしめた。




