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雨海敦子10.赤い風船

 観覧車から降りた後、私たちはユグラネルランドを出て、黒崎さんが待つ駅までの切符を購入して電車を待っていた。


 たまには電車に乗ってみたい。場内でそう言ったのは私だったのだが、この人混みは予想の範疇を超えている。やっぱり車で帰ろう。そう言いたい気持ちは山々であったが、黒崎さんに迷惑がかかるし、何よりもう切符を買ってしまった。諦めるしかない。


 辺りを見回すと人々は頭にキャラクターのカチューシャを付けたり、ユグラネルランド内で購入したであろう荷物を抱えている。


 まだ夢心地な気分なのであろうか。歩き回って疲れているはずなのに、そこら中笑顔で溢れている。そんな姿を見ていると、悩みなんか一つも抱いていない気がして無性に羨ましくなる。


 そんな事を考えていると、電車が通過するというアナウンスが聞こえてきた。その電車が通過すれば、すぐに私たちが乗車する電車もやってくる。


 待ち時間に疲れたのか、私が何気なく大きく背伸びをしたその時だった。列の前方で女性の悲鳴が聞こえたと同時に、須々木さんが急に線路側へと走り出したのだ。群衆の頭上に赤い風船が見えたかと思うと、須々木さんはそのまま線路内へと降りてしまった。



 一瞬の出来事だった。



 誰かが押した緊急停止ボタンは何の役にも立たなかった。電車は耳障りなブレーキ音とともに、勢いよく目の前を通過していった。


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