ライクの過去・1 改
ライクに転機が訪れたのは十七歳の時。
騎士団とともに魔物の殲滅戦に参加していた際、十五~六歳ぐらいと思われる一人の聖女が、疲れ果てて木の下で寝そべっているのを見つけた。
ちょっと心配だったので毛布を被せ、目が覚めるまでそばでスープを作りながら待つことにした。
「うう......!?」
「起きたか。...ほら、スープいるか?」
「は、はい。ありがとうございます」
スープを飲み干した彼女は、ポツリポツリと事情を愚痴り始めた。
聖女の中で唯一の平民である彼女は、他の聖女から虐められるわ、こき使われるわ、そのくせ手柄を横取りされるわで、もう辞めたいと愚痴り終わったところで、泣き出してしまった。
聖女とは強制的に就任させられるものだ。
適性を見いだされれば教会に連れてこられ、修練を積んだあとはひたすら聖女としての役目を死ぬまでこなし、辞めることは許されない。
おまけに平民で孤児とくれば、使い潰されるのは当然というわけだ。
「あんたも大変なんだな。...これ、食うか?」
なんかいろいろ不憫なので、ライクは虎の子のドライフルーツもあげた。
「本当にありがとうございます。...ああ、自己紹介がまだでしたね。私はリッサといいます」
「...ライクだ」
それ以来、ライクはリッサとなんどか仕事場で会った。
聖女の仕事は肩代わりしてやれないので、せめて魔物から守ってやったり、奮発して買った菓子をあげたりするくらいしかできなかったが、リッサはとても喜んでくれた。
そんなあの日、ライクがいつものように依頼をこなしていると、ボロボロの状態で魔物に襲われているリッサを見つけた。