表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか終わる世界に  作者: 作者です
上級ダンジョン【町】初挑戦編
42/133

1話 鉄塊団との情報交換 



 上級ダンジョン。余所の広場ではすでに開放されているが、ラフィスの町では延期のお告げがくだされ、すでに冬も本番となっていた。予定では今年中を目指しているとのこと。



 場所はサラと以前朝食をとった広場の飯屋。


「こうして顔合わせるのは始めてだよね、ラウロさん。こんなとこまで来てもらっちゃってゴメンよ」


 二人とも食事は頼まず。今から彼女はダンジョンでの活動もあるので、お酒でもなくお茶を頼む。


「いや、頼んだのは俺の方だしな。いつも交渉とか持ち掛けんのは他の連中だったか」


 地域密着という意味では、満了組よりもこちらが主体だろう。


「団長から話を聞いた時は驚いたね、まさか有名人が私をご指名とは」


 探検者組織、鉄塊団。


 初級・中級・上級において、全てで活動している徒党だった。


 そこの団長がリーダーをしているのが、上級で活動している[炎の初老共]であり、今回は彼を通してこの場を用意してもらった。


 若いころは炎の青年たちで、やがて中年共になり、今は初老と名乗っているらしい。回復役以外は火の加護者が中心となっている。

 もっと他の名称はなかったのだろうか。


「俺らも上級挑む予定だから、[いぶし銀]とも接点は持ちたかったし、良い機会でもあったわけだ」


 【町】で活動しているのは、初老組と彼女たちだけ。


「まだまだ先代には及ばないけど、私たちとしてもよろしく頼むよ。満了組ばっかで、けっこう肩身狭いんだよね」


 彼女らは二代目。すでに引退しているが、いぶし銀のリーダーだった者は、かつて鉄塊団の団長も務めていた。


「ミウッチャさんたち、前は違う名前だったのか?」


「そうだよ。まあ私がいぶし銀に憧れてたから、似たようなのだったけどね。名脇役は仲間に反対されたから、一番星って組名にしてた」


 光と土。そして創造主がつくりだした、闇夜を照らす〖月〗ほどの明るさはないが、それでも〖星〗は確かに光っていた。


「そろそろ本題に入ろっか。時空剣だよね」


「ああ。俺が授かったのも教えるからよ」


 互いに金のやり取りはなし。


・・

・・


 〖儂の剣〗系統とは違う神技で、〖平伏・大剣落し〗などがある。


 アリーダが〖紅・血刃〗を授かったのと同じ時期。近接武器の加護を持っていたうちの何名かが、新しい力を得ていた。


 〖剣の斬神〗または〖刀神〗と呼ばれる者。

 斬(強) 突(中) 打(弱)

 近接武器の中でも主神級と呼ばれるのは、この柱だけだった。




 一通りの内容を互いに語ったのち。


「転移までできるのかあ。でもラウロさんなら自分で回復できるけど、ちょっと自傷はきついね」


「今の俺だとかなり深く斬らんと、すぐさま転移ってのは無理だ」


 将鋼の直剣により改善はしているが、兵鋼やナイフで傷をつけることも多い。


「あとそれで悩んでたりもする。回復に頼り過ぎてる気がしてな」


 ボス戦などではサブの引き付け役もしているが、中衛での支援が基本。




 刀神の加護。時空剣。


 今の時空は闇が薄い。聖神との会話を思い返し。


「影で拘束もできるんだろ。なら扱いやすさは断然そっちだ」


「一長一短ってところだねえ」


 〖空刃斬〗と〖残刃〗は共通している。時間の流れを意味する神技は三つ。


 〖黎明・剣〗

 〖真昼・影〗

 〖黄昏・斬〗


 夜に関係する名前での固定はできなかったようだ。


 ラウロが持つ、時間を現す四つめの神技。


「でも〖夜明〗って完全に〖黄昏〗の上位だよ。攻撃できるのって、触手で繋がってる対象だけだし」


 真昼で影の手を伸ばし、斬撃で連鎖させ、最後に黄昏で触手を断つ。


「斬る瞬間に抵抗あるからよ、将鋼がないと連続は難しいぞ」


 空間を一定まで斬り進めれば、後はスッと抜けていく。


「あと俺が加護もらった眷属神なんだけど、同種の神さんとあんま繋がってないみたいでよ、〖私の剣〗発生系統は劣化版だぞ。君の剣とかも使えん」


「そんなことあるんだ。まあでも神さまにも色々あるんだろうね」


 ミウッチャはお茶を飲もうと口を近づける。


「お互い熟練上げてかないとね。中距離に対応できるだけでも、私としちゃすごく助かってるし。紋章どうしよっかなあ」


「剣神一体の方なのか?」


 猫舌らしく、口内を手で煽ぎながら。


「〖あたすの剣〗はね。でも〖黎明〗は全部(弱)だから、それなら剣身一体の方が良いかなって」


「羨ましい悩みだな。俺はまだ実戦投入には少しかかりそうだ」


 一応経験だけは豊富なので精神安定もいらないが、それに関係なく失敗することの方が多い。


「ラウロさん加護もらったの最近だったもんね」


 試練ではなく、後付けで加護を得るのはかなり珍しい事例。


「確かに、ちょっと変わった眷属神さまかも」


「すげえ偏屈な柱だったりしてな」


 剣身一体にするのなら、気をつけなくてはいけないことがあった。


「そのうち〖剣の紋章〗って使えなくなるんだろ?」


 熟練が一定を越えれば、〖私の剣〗系統を自分の名称で扱えるようになる。紋章が使えなくなれば、剣神一体もできない。


「私じゃ年齢的に難しいと思うし」


 本人のやる気なども関係してくるが、飲み込みの早い幼少期からというのは重要。


「先代も引退間近まで、強化は(中)より上がらなかったからね」


〖俺の斧〗 打(中) 斬(弱) 突(弱)


「人の一生なんて、神さまと比べりゃあれだもんな」


 剣身一体を選ぶのなら、断魔装具に頼らなくてはいけない。そのため剣神一体という選択は理に適っていた。


 あとなにか交わすべき事柄はないか、ラウロはしばらく考えてから。


「俺は短剣と片手剣に〖儂〗と〖夕暮〗使ってるけど、そっちはどうなんだ?」


「試してはいるよ。でも私って両手持ちの剣だしさ、あんま使わないかな」


 大体の話は聞けたかなと判断し。


「今日はありがとな、同じ時空剣について聞けてよかったわ」


 ここらで閉めようと思ったのだけど、彼女としてはここから本題に移るようだった。


「ねえねえ。レベリオ組さあ、うち来ない?」


「それは俺じゃなくて、リーダーに言ってくれ」


 肩を落とし。


「断られたから、こうやってラウロさんにお願いしてんじゃん。なんかサービスするからさー それとなく仲間に誘ってよぉ」


 鉄塊団の事情はこちらも察している。


「中級にいる連中はまだ難しいのか?」


「行けるかなって組もあるよ。でも本人たちが無理だって判断してるし、年齢的にも私たちより上なんだよね」


 恐らく、以前情報交換をした中堅の所だろう。


「ルチオ君とか私らマジで狙ってたのに、自分たちで旗揚げしちゃうしさ。それもモニカ組だよ」


 両方とも勧誘はしていたらしい。


「あれには俺も驚いたな」


「ラウロさん教育係だったじゃん、今からでもお願いできないかなあ。うちの若い子ら、皆もう中級で満足しちゃってて、すごく貴重なんだよ彼らみたいなの」


 本当に困っているようだ。

 ミウッチャの年齢は三十半ほど。探検者としても一番良い時期ではある。


「あいつらが決めた事だしな、俺としては尊重したい。それにレベリオ組がフリーであることに違いはないし、普通に指名依頼だしても良いんじゃないか?」


 ラウロの年代からは少しずつ下り坂か。


「できろば鉄塊団の中だけで完結させたいんだけど、最終的にはそうなるかな」


 この町で中核になる徒党。


「魔界の門が開けば満了組は予備軍に編入されるし、そうなれば防衛の要は間違いなく鉄塊団だ」


「褒めてもなんもでないよー」


 上級で活動できるだけの戦力が不足している。


「グレゴリオさんに俺も世話になってるからよ。できる限りのことは協力したいと思う」


 この町で活動する者にとって、その人物は欠かせない存在だった。


「緊急時はレベリオ組だって、あんたらの指揮下に入るぞ」


「そうだね。あの人に心配かけるくらいなら、プライドなんて捨てた方が良いや」


 昔は探検者の筆頭として。今は協会員としてこの広場の顔。

 グレゴリオの話でふと気になり。


「イルミロさんたちはまだ大丈夫そうか?」


「うん。時々辛そうだけどさ、先代たちが私ら上がるまで踏ん張ってくれてたから、俺らも頑張るんだって」


 だが意思とすれば引退へと傾いている。


 鉄塊団の歴史は長く、過去には上級組ではなく、中級での活動者が団長を担ったこともあった。


「今から中級か?」


 彼女らはここしばらく町には帰っておらず、この広場で所属組と活動していた。


「上級だけじゃなくて、後進の育成もしなきゃね。とりあえず今回はオークの拠点でも潰しに行く予定」


「大変だな」


 にやけながら。


「ルチオ君たち育てた手腕を是非みたいなあ。余裕があるとき手伝ってよ、協力してくれるんでしょ?」


「今は上級の事で一杯いっぱいなんだよ。そのうちな」


 流れから行けば、恐らく彼女が次期団長だろう。


「立派な後継者だよ、ほんと」


「……うん」


 組織運営は大変だなと思う。


「そうだね、頑張らなきゃ」


「せっかくだから、ダンジョンの情報交換でもするか?」


 協力したいと感じてしまうほどには。


「デカイのあるぞ」


「本当にぃ?」


 もうこの際面倒なので、最初のお金はなしでいく。



 ミウッチャからの情報。


 ・初級 中ボス【岩亀】 宙に浮かび頭上より土塊や(デバフ)を落としてくる。胴体の土がなくなれば降下する。

 高く浮かばないようにするギミックあり。


 ・初級 中ボス【大地の腕】 【飲み込む手の平】に掴まると、今までは握り潰すか場外へ投げるだけだったが、地面に叩きつけるという行動が追加された。



 ラウロからの情報。


 ・中級 敵対生物 これまで猪や鹿などが確認されており、それらは【森】の中で生態系を築く。少し攻撃的ではあったが、地上界に生息する動物と同じかと思われていた。


「他の広場にはいるらしいけど、ここじゃ始めてだよね」


「俺らはまだ一度も接触してないけどな」


 鉄塊団ですら掴んでなかったのなら、まだ個体は少ないのだろう。


「協会の方でも報告は数件上がってるそうだ」


「じゃあ確証がとれたら、皆に広がるかもね」


 事前に知れたのはルチオやリヴィアのお陰としても、もし本当に居るのであれば、フィールドボス的な存在になるのだろうか。


 序盤の森に生息する猪 突進命中時に対象が燃え上がる。恐らく〖炎槌〗と同系統の神技。〖炎鼻?〗


 迷いの森に生息する熊 地面に前足を叩きつけ〖岩の爪?〗をまとう。ルチオから聞いた話しだと、土を食べて石を飛ばしてきた。


「それで出たの?」


「いや。でも灰にはなったそうだ」


 生息動物は倒しても死体が残る。解体して毛皮や肉を素材にすることも可能。


 特殊個体は灰になり、稀に各色の玉を落とす。それは天上界が用意した報酬ではなく、動物が宿した属性の力を凝縮させたもの。


「宝玉が出れば、もう確定だな」


 大きい物であれば杖に取り付ける。小さくとも純度が高ければ研磨してアクセサリーに。


 大きくて優れた物があったとしても、それは人がどうこうできる相手ではないかも知れず。


 砕いて溶かし加工すれば、特殊な瓶を制作可能。


「ほとんど騎士団に持ってかれちゃうから、私らあんま恩恵もらえなかったんだよね」


 〖水分解〗で塗料に変化させ、布に模様や文字を描く。

 普通の白布や神布を染めたり、糸の段階から色づけをして、生地その物に一層の力を宿す。


 ローブ・軽装・法衣だけではない。騎士鎧は肩からマントをなびかせ、所々が布で装飾されているので、これらは欠かせない技術だった。


「【森】はただでさえ優秀なダンジョンだったけど、また一つ価値が上がるぞ」


「なんか【町】より優先したくなってくるよ。だからラファスの上級だけ延期になってるのかもね」


 天上界オリジナル生物。

 もしかするとこういった存在の中で、天獣または神獣と呼ばれる個体が産まれるのかも知れない。地上界にもいるのだろうか。


 これらを使役・契約する神技は今のところ人間にはないが、古の聖者から聞いた終焉の獣がそういった類だとすれば、天上界には有るのかも知れない。


「あれだぞ。岩山のグイドさんが入ってくれるみたいだし、上級だって少しは安定するはずだ」


「正直、かなり助かるよね。いつもその護衛って先代たちが任されてたから、できれば私らが受けたいんだけど」


 時空(杖) これが召喚系統の神技だとすれば。なんらかの方法で異世界から呼び出したのは、主神または眷属神の加護者ということになる。


「私らからは広めな方が良い?」


「まあ近いうちに協会からお触れもでるから、しばらく様子見だな。仲間内だけにしてくれ」


 ラウロとミウッチャは互いに金を出す。レベリオ組の活動費に回す予定だが、けっこうな額をもらえた。


・・

・・


 二人して外にでる。


「ありがとよ、色々と有益だった」


「いえいえこちらこそ。今日は町にもどるの?」


 一方を指さし。


「ちょっと買い物してくけど、その予定だ」


「じゃあうちのとこで買ってよ」


 町でも買えるが、ここでは協会の許可を得て、探検者が売っていることもある。税金を払っているので値段は変わらなくとも、常連になるだけの価値はあった。各種〖薬〗など。


「おうよ」


「感謝でーす。それじゃ、私行くね」


 手を振って走っていく。神殿への列に並ぶのかと思ったが、門へと向かうようだ。


 売り場に足を進めながらも、しばらく意識を向けていると。


「おっちゃーん、聞いてきいて! ボクすごい情報ゲットしたよ」


 壁門に駆けより、目を爛々と輝かせながら、身振り手振りで説明する。


 門番はすげえなと、今はじめて聞いたような返事をした。


「あの人ここの顔役だし、もう知ってると思うけどな」


 先代のいぶし銀には水も光もいなかった。手段は〖薬〗か感情神の単体回復だけで、全員が装備系統の加護もち。

 五人いたうちの二人はもう、足腰にガタがきているらしく杖での生活。


 回復に頼りすぎない。この難しさをラウロは実感していた。

 できる事なら、一度彼らの戦う姿を見たかった。


 

個人的に戦闘描写が難関なので、そこが片付けば目途がたった感じになります。


上級編は前半後半で投稿予定で、前半は八話を予定しており、六話まで終わったので投稿開始したいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ