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私の意見を聞くことなく、結局その日は教室まで手を繋いで行った。


「・・。おはよう、美咲さん。今日もお熱いことでして。(あんた婚約破棄する気あんの?)」

「えぇ、おはようございます千捺さん。(えぇ、勿論よ!!!)」

「・・・。美咲、どうかしたか?」

要は私が千捺と目で会話しているのがわかるのか繋いでいる手の力を少し強め、腰を屈めると私の事を下から覗き見る。



あぁ、もう!!なんでそういうかわいい仕草ばかりするんだろう・・。

お前がヒロインになれ!!!

「・・いいえ、なんでもないわ。それでは千捺さん、ごきげんよう。」

要は私が別れの挨拶を済ませると握りしめていた私の手を離しいつものように手を腰に置く。


「美咲、今日から昼ご飯が必要だろう。父さんが理事長室で一緒に食べたいと言っていた。」

え、これはまさか昨日の芋ずる式イベントでは!?

目の端に移った千捺の顔に「お前やりおったな。」と書かれている気がする。

「まぁ、要のお父さんが?なにか用でもあるのかしら・・・?」

「どうだろうな。ただ、昨日の図書室でのことを気にしているようだったぞ。あそこの棚は七段まであったのを四段に置き換えるらしい。」

どちらかと言うと私よりも要の方が怪我をした可能性高いと思うんだけど・・・。


「そうなのね。ところで要、肩は大丈夫?昨日私を庇ってくれたでしょう?」

「あぁ、問題ない。美咲こそ大丈夫か?」

「えぇ、要が守ってくれたおかげでなんともないわ。ありがとう。」

「・・っ!!」

何?そんな驚いた顔して。私がお礼を言ったのがそんなに変?

「要?」

「・・。じゃあまたお昼に迎えにくる。」

私が名前を呼ぶと私から顔を隠すようにそっぽを向いた。

え、私何か怒らせるようなことしたかしら・・?



「あーぁ、美咲ったらほんと天然よねー。あんなに愛されているのに何を思って婚約破棄するなんていってるのかしらね・・。」



美咲からは見えていなかったものの、クラスメイトはしっかりと目撃していた。

要の顔にはいつものポーカーフェイスではなくなにかに悶えるような表情を浮かべていたのを。










「あっははー!ごめんねー!美咲ちゃん!図書室であんなこともう起こらないから安心して!!」

お昼。

私は理事長室で一緒に三人でお昼を食べています。


「幸い誰にも怪我がなくてよかったですわ。私のことも要が守ってくれましたし。」

「ねー!!我が息子ながらかっこいいね!!あっははー!」

このテンションの高さは要には似てもにつかない。

容姿はそっくりなのに。


要は黒髪でさらさらのストレートでキリッとしてる感じなのだが要のお父さんは少し垢抜けた感じだ。

少なくとも16歳の息子がいるようには見えない。年齢詐欺です。

「父さん。茶化すのはやめてください。もう少しで美咲は怪我をするところだったんですよ。

美咲の顔に傷でもついたらどうするんです。」

「あはは。すまんな。まぁ要がお嫁さんにもらうんだからいいじゃないか。貰い手がいないんじゃないんだし。」

「そういう問題じゃないです。美咲は女の子ですよ。可愛い顔に傷をつけたくないんです。」

か、要?この話題そんなに深刻なものじゃないから。

「じゃあもうそろそろ予鈴もなる頃だし、教室に戻りなさい。今日は楽しかったよ。またおいで。」



この芋ずる式イベントの一番重要なところはご飯を食べ終わった後だったりする。

ヒロインはここで要に生徒会へ誘われて生徒会へ入ることを決意するのだ。

しかし、このイベントに参加してしまっているのは残念ながら私だ・・!

まぁ断るがな))


「美咲。生徒会の件なんだが、」

来たーーー!!!


「美咲の話をしたら美咲の分も勧誘が貰えたから、入ること自体は決定した。明後日生徒会の会議があるから。明後日の放課後空けておいてくれ。」

「・・え?」


入ること自体決定事項・・だと?

「・・・。美咲。」

「なに・・?」

「やっぱり生徒会にはいるのは嫌か?」


要は目を伏せると不安げに前髪を揺らす。

ずるい。そんな表情をみせられて嫌だといえる人間はいないんじゃないんだろうか。

「そういうわけじゃないけど、やっぱり私のほかにもやりたい人いたんじゃないかなと思って。」

ヒロインとかね。



「・・・。そうだな。でも俺は美咲にやってほしかったんだ。無理矢理決めてすまなかった。」

要はしょぼんと効果音がつきそうなほど落ち込んでいる。

「まぁ、勧誘して貰ったからにはちゃんとやるわよ。でも次からはちゃんと相談してほしいな。」


「・・!!!あぁ。」

ぱあああああぁっと要の周りに花が咲く。

・・・ほんとにかわいいんだから・・!


「それで?生徒会に入ることを承諾しちゃったわけ?」

「いやだって勧誘してもらったし・・。」

「言い訳ね。」

うっ・・・。何も言い返せない・・。


「私的には別に婚約破棄しなくてもいいと思ってるけどね。」

「え?」

「だってさ、この世界が乙女ゲームの世界だってのは分かるっていうか、知ってるけどさ私たちの第二の人生の世界でもあるんだよ。」

「!!!」

「ゲームだけどゲームじゃない。まぁ分かってると思うけど二年生になってヒロインの花園凜が無事エンディングまでいってはい終わりじゃないじゃん。私たちの人生はまだ続くしさ。・・・というかこの世界の西園寺要が美咲を手放すのが想像できないというか・・・。」

「ゲームじゃないのは分かってるつもりだよ、この先人生が続くのも。でも実際ヒロインは出会いイベントで要とぶつかりそうになってるし、要のルートに入ったのは間違いないんだけど。」


千捺にはすべてお見通しみたいだ。

私が要と居るのが楽しくて結婚破棄するっていう目標が揺らぎ始めているのが。


「・・・もしヒロインといたいって要が言うならばその意思は尊重するべきだと思う。」

「はぁ、」

「でも。じ、自分から破棄されに行くのは、その・・止めようかな。」

「!!!!・・・そっか。それがいいと思う。」


私は要のことが好きだ。

ゲームと同じで優しくてかっこいいところも、

ゲームと違って頑固で可愛いところも。


婚約を破棄されに行くのはもう止めだ。

私は婚約破棄されないように頑張ってみようと思う。

千捺がやっとその気になったかとでもいう風にフンっと鼻を鳴らした。


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